第5章蓮条椿の襲来⑪
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他人の恋を応援する共通の目的を口実に、意中の相手と仲を深めようとするのは、きっと褒められたことではないでしょうね。
私、
それでも恋が戦いというのなら、こうやって回ってきたチャンスは最大限に活かしたいと思ってしまった私がいたの。
どうにも私には、悠長に機会を窺っている時間はなさそうだったから。
今、彼の親友である
その人には絶対に負けたくなかった。
ええ、あの『
冴羽君から直接その名を聞いたわけではないけれど、先週のユートピアランドの不自然極まりない二人の行動からして、十中八九応援相手は彼女のはず。
自分の目的のためなら嫌いだと散々罵ってきた相手でも飄々と取り入ろうとするとは、なんて厚かましい女なのかしら。ええ、厚顔無恥とは蓮条さんのためにあるような言葉だわ。
冴羽君も冴羽君で、何であれだけ蔑まれてきたにも拘わらず、手を貸す気になったのか、ほんと不思議。ま、そこは蓮条さんが普段のように強引に頼み込んで断れ切らなくなったのだろうけど……ちょっと呆れるわね。もっと自分を持って欲しいものだわ。
ただ、意外なのはそのグイグイ迫るスタンスを、肝心の播磨君本人に直接発揮できていないみたいなのよね。一年の時から同じ仲良しグループにいて、今更、冴羽君に頼るとかまどろっこしい手段に出るとか。実はああ見えて彼女、好きな人の前ではあがって何もできなくなるタイプということかしら。
それならそれでと自分の欠点を他で補ってでも目的を果たそうとするその執念だけは、ある意味尊敬に値する。きっと彼女みたいな人間が、社会において成功するのだろうから。
そんな彼女が恋敵だからこそ、私はうかうかしていられないと思った。
冴羽君からの厚意を断ったのも、相手が蓮条さんだからに他ならない。恐らく冴羽君からすれば、私の気持ちに気付いた彼なりの配慮だったのかもしれないけれど、あの人と同じフィールドで戦っては多分私はどこかで彼女に出し抜かれて負けてしまう。
それにきっとあの提案は冴羽君の独断だろうから、恋敵も応援していると蓮条さんの耳に知れたらまぁひどいめにあわされたことでしょうし。
「――なぁ進藤?」
と、私の思考は不意に飛んできた播磨君の声によって中断される。
「早速相談何だけどさ。ちょっと前に凛々乃に健吾のラインを教えたんだけどさ、凛々乃ってば何て送ったらいいかで、大分悩んでて一向に連絡とれてないみたいなんだよな。健吾と頻繁にラインしている進藤なら、何かいい案ないかなぁと」
「そうね……」
顎下に手を置き、考える素振りをする私。
そう言われても、特に何も考えてないってのが一番の答えなのよね。
特にこの問題は、異性かどうこうより好きな相手かどうかというのが大きく左右しているでしょうし……。
「意識して緊張するのはわかるけど、少し気負いすぎだと思うわ。冴羽君ならどんなクソリプでも既読スルーすることはないから。ほら、こんな感じに」
試しに私はぱっと頭に浮かんだ言葉を送信した。
『暇よ。私を驚かせて見なさい』
すると、数分もせずに返事はやってきて、
『今、蓮条さんと自宅で二人きりですけど、何か質問ありますか?』
「はぁ!?」
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