第4章 完成してしまったねじれトライアングル⑨

                  ♠

 はぁ、今週は本当に疲れたなぁ……。

 土曜の昼下がり。

 僕は自分の部屋のベッドの上で寝転がりながら、ぼーっとスマホをいじっていた。

 日に日に増すクラスメイトからの嫌悪の視線に、ごっそりと精神を抉られていた僕。特に女子からのアタリが人一倍強いというか、すっかり害虫扱いなのがもう。特に高宮さんなんか目があった瞬間しゅばっと音速で逸らされちゃうし。あれはほんと応える……。まぁ自業自得なんですけどね、はい。

 とまぁそういうわけで、すっかり疲労困憊だった僕は、外は雲一つない快晴だというのに何する気も起きず、ご飯も用意する気にもなれない文字通りの無気力状態になっていた。

 あれがまた来週からも続くのかと、億劫になっているのも要員の一つ。思えば僕、絵に描いたような陰キャなのに、龍君のおかげで今まで奇跡的にイジメとかにあわなかったものなぁ。

 というか、クレハのハンカチもどうやって返してもらおう……。

 正直、龍君に相談すれば、問題を解決してくれるんじゃないかって思っちゃう部分は少しある。けど、親友にそんな風に頼るのは、何だか違う気がして――

 と、懊悩していると、手に持ったままのスマホが鳴った。

『おっす。暇なら行っていいか?』

 龍君からのライン。

 暇な龍君がふらっと家に来るのは、よくある光景だ。

 僕もいつも通りに返す。

『りょ。部屋にいるから適当にあがってきて』

 家の鍵を開けた記憶はないけど、龍君は合鍵を持っているし問題ないだろう。と、そう思った矢先に、家のドアが開く音が微かにガチャッと聞こえた。龍君と僕の家は隣同士。ラインを送って数分も経たずに現れても、何も不自然じゃない。

 ドスドスと階段を上がってくる音が聞こえる。そんな慌ただしい音に特に動じることもなく、僕はあざらしのようにごろんと寝転んだまま、龍君を待っていた。だって、いつものことだし。

 これがもし、気になる女の子がやって来た――とかだったら、部屋を掃除したり、部屋着を着替えたり、アレな本やゲームを隠したりそりゃもう火事場のように大変だっただろうけど、あいにくそんなイベントは僕には未来永劫やってこないしね。

 そう苦笑すると同時に、僕の部屋の扉が開いた。

「へ…………?」

 呆然となった身体が、自然に起き上がる。

 だって僕の部屋にやって来たのは、

「よ」

 と、気さくに手を上げて軽快な笑みを浮かべた龍君と、

「ども…………」

 とってもよそよそしそうな態度で、小さく頷いた、蓮条椿さんだったのだから!

「ど、どうも……」

 呆気にとられたまま、反射的に頷き返す僕。

 えぇええええええ、何で蓮条さんが僕の家にぃいいいいいいいい!?

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