10.2.変化
そんなに大きな変化があると聞いたら黙ってはいられない。
すぐに立ち上がって契約した奴らに会おうとしたのだが……子供たちがっ!!
仕方ない……口頭で聞くことにしよう。
『どいつだどいつだ?』
『ウェイスとドロだ。戦っている最中、人間との連携が取れなくて悔しい思いをしたらしくてな。二匹が決めた人間と簡易契約をしたんだ』
『へー!!』
そりゃすげぇ!!
確かに連携を取れないのは痛手だったかもしれないしな……。
経験から考えを変えるのはとてもいいことだ。
うんうん!
さて問題が一つ。
誰と契約したんだ。
ここはね、もう親父目線でしっかりと見極めたいですね!!
『えーとね、ドロがナレッチって奴と契約して、ウェイスがリスティって奴と契約した』
『誰』
聞いたことがあるような……ないような……。
いや、誰よ。
『どんな奴だ?』
『僕も詳しい話を聞いたわけじゃないからよく分からないんだけど、何でも一番初めにダークエルフが襲撃に来た時、最前線で戦ってた人間……らしいけど』
『ベリルを呼ぶのだ!』
『言うと思った……行ってくるよ』
いやそりゃそうでしょうよ!
どこぞの誰とも分からねぇ奴にそう簡単に任せてたまるかってんだ!!
『『リーダーうるしゃい……』』
『すいません……』
まさかシグマとラムダにうるさいと言われる日がくるとは思っていなかった。
さすがにガンマも注意してくれたのだが、二匹はすぐにまた眠ってしまう。
まぁ眠いなら仕方ないね。
『すまねぇな兄さん……』
『いいさいいさ。子供だしな』
『まぁな……。ていうかこれじゃ動けないじゃないか』
『夢が叶ったからいいのさ……』
『へー……。やっぱ変わってんなぁ……』
本当は埋もれたいんだけどなぁ。
さすがに無理だからね。
でもこれで俺は満足なのでいいのです。
ていうか本当によく寝てるなぁ。
俺の毛には安眠効果があるのだろうか。
結構硬い毛の筈なんだけどね……。
『あ? 兄さん気付いてねぇのか?』
『何が?』
『兄さんの毛って、魔力が通ってたから硬かったんだ。だけど今は通っていない』
『……あ、魔力総量が減ったから毛にまで魔力を循環させることができなくなったのか』
『だから今、兄さんの毛並みはどの仲間よりもいいんだぜ?』
『へ~~!』
自分じゃ分からねぇもんだなぁ。
でもそれなら子供たちが爆睡している理由がよく分かるね。
そんな話をしていると、ベンツがベリルとセレナを連れてきた。
俺の姿を見て苦笑いしているようだが、反応はしないでおこう。
『連れて来たよー』
『私も寝るー!!』
「あ、セレナちょ……」
セレナは腕の中に飛び込んできた。
既にその場にいたセレナの兄弟は迷惑そうにしていたが、すぐに眠り直したようだ。
かくいうセレナも、速攻で寝落ちた。
そんな早く寝る??
ていうかね、腕の中に居られると俺が首を降ろせないんですよ。
包み込んでやろうか。
「ありゃりゃ……」
『まったく……。セレナ、通訳をするんだ』
『……ふぁっ、そうだった……』
忘れていたのか……。
まったく困った子だよ。
そこが可愛いんだろうけど。
ということで、セレナに通訳をしてもらいながらナレッチとリティスのことについて聞いてみた。
ベリルはその二人に心当たりがあるようで、すぐに答えてくれる。
「ナレッチさんは冒険者パーティー、クラウンダートのリーダーをしている人です。ナックルグローブで戦う人ですよ。土魔法が得意で巨大な壁なんかを作ったりします。契約されたドロさんとの相性はいいかもしれませんね」
『ダークエルフと戦った時に最前線にいたと聞いたが……』
「そうですね。ディーナギルドマスターと一緒に戦っていたはずですよ。セレナのお父さんはみたことあるんじゃないですか?」
『……んー、覚えていないな……』
「ありゃっ?」
まぁあの時はあんまり興味とかなかったもんな。
覚えていないのも無理はないか。
冒険者パーティーのリーダーやってるくらいだから、それなりに強いんだろう。
ドロは任せても大丈夫そうだな。
さて次はリティスについてだ。
「リティスさんは女性の冒険者です。冒険者パーティーウォータのリーダーを務めていますよ。水魔法の中距離攻撃が得意ですが接近戦もこなします。前に紫のエンリルと一緒に狩りに行って、水浸しになって帰ってきたことがありましたが……覚えていませんか?」
『それは覚えてるわ! ああ、あいつか。でもその時は二人いなかったか? どっちだ?』
「香水がきつい方です」
『理解したわ』
そんなこともあったなぁ~。
あれ、だとしたら今ウェイス結構渋い顔してるんじゃないか?
『ウェイスの奴、臭いとか大丈夫なのか?』
「あははは……」
『まじか』
その笑いで何とかく察したぞ。
妙なやつをパートナーに選んだものだな……。
「あ、だけどリティスさんが折れたそうです」
『え、ウェイスすげぇ』
「いや……あのですね。実はギルドにいるときに香水の件で喧嘩になったらしく、それを多くの人が聞いていたんですよ」
『あいつ喧嘩するんか……』
「余程きつかったんでしょうね。それでウェイスさんがリティスの付けている香水がきつすぎると言っていることが他の人たちにも分かったらしいんです」
『それでそれで?』
「冒険者全員が『ウェイスの言う通りだ』と叫んでリティスさんが折れました」
『はははははははは!!』
彼女の付けていた香水の匂いは人間からしてもきつかったらしい。
だが上級冒険者であり、更にはパーティーのリーダー、加えて性格に少し難があるため誰も指摘しなかったようだ。
とはいえウェイスには上下関係の何それはまったく関係のない話なので、ドストレートに臭いと言って他すべての冒険者の共感を得ることができたらしい。
完全に香水を止めたわけではないらしいが、今では誰も文句を言わない丁度いい量の香水を使っているようだ。
さすがにショックだったんだろうな……うん……。
なんか可哀そうになってきた。
笑ってごめんな、フフフフッ……。
何はともあれ、ウェイスが人間に指図を出しているあたり、あいつは上の立場にいる感じがするな。
あいつの方がリーダーシップありそうだし、問題なさそうだね。
あーよかった。
俺に相談なしで契約するからちょっとびっくりしたけど、ベリルの話を聞いて安心したわ。
「べべっ、ベリル様ぁー!!」
『おいハバル背中の上で暴れんな!!』
おっ?
ハバルとガルザがこっちに走ってきている。
ベリルに用があるらしいが……どうしたのだろうか。
「おわわっ、どうしたんですかハバルさん」
「お帰りになられましたよ!」
「だ、誰がです?」
「お母様ですよ! テマリア様です!」
「ええっ!!?」
『えっ???』
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