5.49.観念


 先程俺が説明した事を否定しなかったので、恐らく俺の推理は合っているはずだ。

 その証拠に、悪魔はついに観念したのか頭をだらんと力なく垂らしている。

 めっちゃくちゃ落ち込んでいる様だ。


『で、結局お前なんなんだよ』

「悪魔だよ……」

『魔物の軍勢をこっちに向かわせたのは誰だ?』

「魔王様だよ……」

『何のために?』

「領地を広げる為に……」


 なるほどなるほど。

 ていうかめっちゃ喋るようになったなお前。

 さっきまでの反抗的な態度はどうしたのよ。


 まぁ喋ってくれるんだったらなんでもいいんだけどさ。

 でも領地を広げる為に魔物をここに向かわせたっていう事は、何処かで戦争を吹っかける気だったんだろうな。

 それを俺たちに阻まれてしまったという事か。

 うーんごめんな。


 だけどこっちも生活かかっとんねん。

 普通に怖かったし、自己防衛なので許して欲しい。


 とりあえず、今の話をまとめると……。

 魔王がどこかの領地に攻め入る為に、魔物の軍勢を向かわせた。

 で、その道中に俺たちの住処があり、俺たちがその軍を全滅させてしまったと。


 何かの間違いかもしれないとして、後二回魔物の軍勢を派遣。

 でもそれも帰ってこない。

 そこで不死持ちのこの悪魔を使って調査をしてくるように命じた……っていう感じか。


 別に戦争の邪魔するつもりは無かったんだけどなー……。

 迂回してくれねぇかな。


『なんかごめんな』

『『『あ、オール様。今こいつ洗脳してるんで質問にしか答えないですよ』』』

『お前ら勝手に何をしでかしちゃってんの!?』


 そんな魔法あんのかよ!!

 っていうかこういう魔法が使えるのってお前しかいねぇだろ冥!

 やけに喋ってくれるなぁと思ったよ!


 これから仲良くなるかもしれない相手に、そう言う事はしないでいただきたいなぁ……。

 仲良くなっておけば守ってくれるかもしれないからね。

 つってもこの状況じゃ無理だけど。


 じゃあ聞けるだけの事は聞いておくか。


『ったく。じゃ、悪魔って何してんの?』

「人間と敵対している一族……。竜族とも仲が悪い……。いつもは戦いに向けて訓練とかしてる……」

『敵ばっかじゃねぇか』


 ていうかあれだな。

 悪魔事情とか心底どうでもよかったわ。

 他に何か聞いておきたい事とかあるかな……。


『お前ら何か質問していいぞー』

『あ、じゃあどんな魔法使うんだ?』

「悪魔は身体能力強化の魔法と闇魔法しか使えない……」

『へー。結構少ないんだなぁ』


 それだけでよく人間と戦おうと思うな……。

 あ、でも他の魔物を服従させることが出来るから問題ないのか。

 要は物量ね。


 でもそれだと光魔法とかに弱そうだよなぁ。

 攻撃するために魔法じゃないから何とも言えないけど、多分効くだろう。

 相手の弱点は知っておいて損は無いからな。

 良く気が付いたぞガンマ。


『オール様! 僕も質問してもいいでしょうか!』

『いいぞー』


 ヴェイルガが質問とはな……。

 結構意外である。

 まともな質問をするかがちょっと不安ではあるけど。


『僕らの種族は悪魔の軍勢にいるのかっ!?』


 うわぉめちゃまともな質問~。

 うん、確かにそれは気になる事ではあるな。

 相手に俺たちの種族がいたら結構強いと思うし、あんまり戦いたくない。

 自分たちで争って数を減らすなんて言うのは無しだ。


 さて、それに対する悪魔の答えは……?


「いない……」


 とのことだ。

 いないのか。

 ならいいんだけどね。


 てことは、やっぱり俺たちの種族は数自体が少ないのね。

 これ以上エンリルを見つけるのは難しそうだなぁ。

 スルースナーたちとあったのは本当に奇跡ですね。


「っどぁああああ!!? なんだなんだなんだぁあああ!!?」

『うっわびっくりした』

『『『洗脳が解けました』』』

『何が解除のトリガーだったのよ』

『私の魔力です』

『あ、そう……』


 どうやら冥の魔力が切れたらしい。

 洗脳魔法か……。

 また今度教えてもらっておこうかな。

 暗黒魔法出来ないと使えないみたいな魔法じゃなきゃいいなぁ……。


「うおおおおお前ら俺に何したおい!!」

『聞きたいことは聞かせてもらったので帰ってもいいよ』

「魔王様に頼んでお前らの事殺してもらうからなぁー!」

『俺は許そう……。だがこいつが許すかな!』


 俺がそう言った直後、ガンマの拳が悪魔の頭を吹き飛ばしたのだった。

 こっわ。

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