5.16.魔物の群れ
魔物って……。
あー、そういや俺魔物と動物の区別あんまりよくわかってないんだった。
その辺どうなんですかベンツさん。
『嘘でしょ』
『さっせん……』
ナチュラルに傷ついたわ。
いやでも仕方ないじゃないっすか。
聞いてない俺も悪いけどね?
今までに聞いたことのないくらいの大きなため息をついてから、ベンツは説明をしてくれた。
『魔法を使うのが魔物。使わないのが動物』
区分けめっちゃ簡単やんけ!!
そのくらいなら俺も分かってたわ!
えーっと、じゃあ今は、魔法を使うことが出来る動物、つまり魔物がこっちに進軍中って訳ね。
何でこんな時に?
数も分かんないし、とりあえず聞いておこう。
『数は?』
『分からない。とにかく沢山だった』
『見たのか?』
『いや、音で分かった。魔物はどんな魔法を持ってるか分からないから、姿を見せること自体危険。目視では確認しなかった』
しっかり帰ってきてくれるってのは本当に助かる。
情報は大切だ。
『どっちから来てた?』
『北西だよ』
『ふむ、じゃあ行きますかぁ』
俺は魔物を殲滅するために立ち上がった。
もし全て倒すことが出来れば、冬を越せるだけの食料が手に入る。
もっとも、その肉が食べれる物かどうかはしっかりと吟味させていただく所存。
だが、俺が行こうとするとベンツが止める。
『何言ってんの!?』
『え? いや、安全を確保しに行こうかと……』
『何言ってんの!?』
『そうだよオール兄ちゃん何言ってるの』
『そうですよオール様。何を言っておられるんですか』
んーー??
俺が間違ってるのかなー?
え、でもこれって普通の事じゃないんですか?
だって魔物の群れとかめっちゃ危ないだろうし、倒しておくに越したことないじゃないか。
それに、食料も手に入る。
俺の光魔法、無限箱に全部収納しておけば、保存もできる……。
良い事しかないじゃん!
確かに数が分からないってのが不安要素ってのはあると思うけど、大丈夫でしょ!
ていうかね……俺この姿になってから本気出したことないの。
一回めちゃくちゃに暴れてみたいのー!
『駄目?』
『『『駄目』』』
ショボンヌ。
じゃあ何が駄目なのか教えてくれ!!
それ聞いたら考えを改めようじゃないか!
『その理由はなんだ?』
『そもそも敵の能力がわからないよ』
『数も分からないのに単身で突っ込むのは無謀』
『隠れてやり過ごすのが一番です』
あー……。
えーっと、まぁそうだけどさぁ。
戦う前にそんな準備していく奴いるか!?
数が分からないってのはまだわかるけど、能力が分かるまで手を出さないってのはよく分からん!
それとヴェイルガ。
お前の案は俺は無視する。
危険性はあるかもしれないけど、その分見返りは大きいんだぞ……?
ハイリスクハイリターンって奴ですよ。
ていうか……。
『それじゃ防戦になった時負ける未来しか見えないぞ……』
『あっ』
仲間を想ってそう言う案を出したのだという事は分かる。
確かにそれは大切な事だ。
だが、守ってばかりでは勝てる戦いも勝てない。
守るときは後ろに逃げ場がない時だ。
逃げるという手段が無くなって、ようやく守るという行動に出る。
その時先鋒がいなかったら、碌な情報もなしに戦わなければならなくなる。
そっちの方が危険極まりない。
いきなり住処の前に何百という魔物が押し寄せてきたらどうする?
勝てたとしても、何かを失うのは目に見えているはずだ。
その前に先鋒が出て少しでも戦ってくれれば、相手の情報も分かる。
『情報は大切。それは分かるが、それを調べる奴がいなければそもそも情報は回ってこないからな。てことで俺は行くぞ』
『どうしてそうなるの!』
おーれーがーいかなきゃ保存できないでしょー??
それに暴れてみたいの!
つってもそれだけ言うと絶対に反対されるので、何とか言いくるめよう。
『リーダーが仲間の為に戦うのは当然の事である!』
『いや、そうだけど……』
『とりあえずガンマは連れていくから大丈夫だ』
『僕も行きますよ!』
『いや、お前はいい』
ヴェイルガがふてた……。
でもこいつが来ても雷魔法使えるの俺だけだし、足遅いし、言ってしまえば邪魔なので……。
ベンツにはここを守ってもらわないといけないので、ここにいてもらう。
すると、シャロがぴょんぴょんと跳ねる。
『お、俺は!』
『シャロか。まぁガンマがいるなら大丈夫か』
『やった!』
そろそろ本格的な戦いも学ばせておきたいしな。
まだ半年だけど、今からでも問題ないだろう。
それくらいの力は持っているはずだ。
後二匹くらい連れて行きたいな……。
てなると、デルタとレインか。
ニアは攻撃魔法持ってないし、ラインは雷魔法を持っているが、ベンツと相性がいいのでできる限り置いて起きたい。
うん、これだな。
後は……。
毒魔法をしっかりと見てみたい。
メイラムを連れて行こう。
『おっしゃいくぞー!』
『おー!』
じゃ、とりあえず四匹呼んでくるか!
ベンツはそんな俺を見て、頭を抱えていた。
『こんな事なら数も見とけばよかった……』
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