5.14.仲間紹介


 ヴェイルガは本当に懐っこい奴だった。

 これは話していれば自ずと分かる。


 実際問題、ヴェイルガは丁度一歳。

 話をすれば子供の様に楽しげに話し、聞いてないこともバンバン話してくる。

 俺的には問題のない範囲ではあるが、これを続けられたら流石に気が滅入るだろう。

 おそらくその被害者が一角狼の三匹であったに違いない。


 話を聞いてみれば、攻撃は雷魔法を使うので、攻撃魔法自体は結構多く持っているらしい。

 だが、ヴェイルガは雷属性の補助魔法を有していた。

 自分の持つ雷魔法を他の仲間に分け与え、能力を少し向上させるという物。

 雷魔法を使う狼は基本的に足が速い。

 纏雷以外にも速度を上げる魔法もあるらしいし、攻撃速度も速いのだ。

 それに補助魔法を付与すれば、基本的には敵なしだったという。


 ヴェイルガの能力だけは、他の一角狼も認めている様で、そこだけは褒めていたらしい。

 リーダーとしての素質は無いと、俺にこっそり教えてくれた。

 うん、そんな気はしてた。


 一角狼の毛並みは全て同じで、明るい灰色をしている。

 後は角があるかないかだけの違いしかない。


 一番体の大きい一角狼は、ヴェイルガの代わりにリーダーらしい仕事をしていたガルザ。

 ガルザが移動先を決定したり、狩りの作戦を立てたりしていたらしい。

 一番リーダーらしいのはこのガルザだな。


 ガルザは雷魔法しか所持していないらしい。

 それは他の一角狼も同じ様で、全員が雷魔法しか使えない様だ。

 だが、その威力や種類は普通の物と異なる。

 今度教えてもらおう。


 残りの狼は、ディーナというメス狼と、デンザというオス狼。

 体の大きさ位しか見分けられるものがない。

 これ、匂いで覚えたほうがよさそうだな……。


 この一角狼たちは暫くこの群れで移動していたらしい。

 ていうか数か月前に他の仲間と別れてしまったのだとか。

 それでこの数かぁ……。


『結構苦労してんのね』

『ぶっちゃけヴェイルガ使えないです』

『うっわ、めっちゃ言うじゃん……』

『俺たちとしてはオール様がリーダーであることの方が嬉しいです。しかし、ヴェイルガの能力は優秀。きっとオール様のお役に立つでしょう』

『ねーねーちょっと、今の話全部聞こえてるんだけどーー?』


 もう既に隠す気のなくなった嫌悪。

 これ結構傷つく奴だけど、ヴェイルガは特に気にしていない様だ。

 それはそれで図太いな。

 感心するわ……。


 まぁ、兎にも角にも全員が俺に従ってくれるようになってよかった。

 ヴェイルガは既に俺に負けている為、リーダーの権限は無い。

 というか、生かしてくれると聞いてすぐにその権限を放棄したのだ。

 今は普通の一角狼である。


 俺としては……。

 指揮系統に優れた狼が欲しかったんだけどなぁ……。

 今はスルースナーしかいないや。

 後ベンツもいるか。


 まだ三匹。

 この数にしては十分かもしれないが、一種族一匹は欲しかったというのが本音である。

 ガルザはそれらしい能力を持っているだろうが、リーダーの経験が無い。

 狩りでは雷魔法を使った作戦しか立てていなかった様なので、他と連携は取れないだろう。


 子供たちの中では、シャロが一番仲間を率いるのに優れている気はする。

 ガンマは強いが、結構猪突猛進なところあるしな……。

 仲間を任せるのは怖いし、なんなら仲間を巻き込むほどの能力を持っている。

 逆に団体行動をさせるのは危険だろう。


 スルースナーの群れの中では、毒を使うメイラムが優秀だった。

 狩りも指揮統制も出来ていると感じたのだ。

 だが、声が不気味。

 喋り方もちょっと怖いのだが、それが毒使いって感じではある。

 夜には絶対に話しかけてこないで欲しい。


 とりあえず、こいつらを皆に紹介しよう。


 そろそろ雪が降りそうだ。

 冬の事も相談しておくか。

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