5.3.周囲の探索


 皆が帰ってきた。

 全員の口には大きな獲物が咥えられており、それを全てデルタとシャロに渡す。


 皆料理のおいしさに気付いたようだな。

 感心感心。

 俺がもっと早くできればよかったんだけどなぁ……。

 最大火力しか出せなかったので、許して欲しい。


『どっちに行ってたんだ?』

『東の方に行ってたよ。小さい獲物ばかりだと思ってたけど、大きい獲物もいっぱいいるね』

『そうか。じゃあ俺は西に行ってみるか』


 行く方角が決まった。

 東はそこまでの脅威はなさそうだな。

 なんせ皆が獲物咥えて帰ってきてるんだから。

 あまり危険はないのだろう。


 狩りをするにしても、平原もあるのだから見通しはいいはずだ。

 水場もあるし、そこに獲物が集中するのだろう。

 狩場は暫くそっちでいいかもしれないな。


『よし、シャロー、デルター。食い終わったら行くぞー?』

『りょうかーい!』

『え、何処に?』


 話を聞いていなかったデルタは少し狼狽えている様だったが、シャロが外に行くと説明してくれたので、やる気になった。

 どうして俺と行くとなると、皆やる気出してくれるんだろうか。

 まぁいいんだけどね。


 それと、ベンツに待機してもらってガンマについてきてもらうように頼んだ。

 二匹は快く了承してくれはしたが、ベンツは少し首を傾げていた。


『どうした?』

『いや、僕じゃないんだって思って』

『ああ。お前耳が良いだろう? 防衛するときは索敵能力が高い方が残ってくれた方が助かるのさ』

『なるほど……。分かった』


 まぁそれも時と場合によるけどな。

 まだどんな敵がいるのか分からない。

 それが分かり始めたら、また状況を見て防衛にあたる狼を決めていけばいいだろう。


 よし、じゃあ皆がご飯食べるの待つかぁ。



 ◆



『準備完了!』

『いつでも行けるよ!』

『行くか。ガンマもいいか?』

『おう。問題ない』


 今回の探索の目的は、周囲の調査と獲物の確保。

 獲物の確保は、俺がいれば無限箱に入れることが出来るので、襲い掛かる敵は全て入れていく予定だ。

 いやぁ無限箱マジ便利。

 時間が止まってるってのは本当に良いよね。


 光魔法ってそう言うことも出来るのかな……。

 今度試して上手くいったらニアに教えてやろう。


 小さな子供たちを、ベンツと残りの子供たちに任せて、俺たちは西の山を進んでいくことにした。

 道は緩やかなので、歩くだけであれば危険はないだろう。


 周囲は木ばかりだ。

 勿論草も生えているのだが、そこまで背は高くない。

 だが、隠れるには十分である。

 俺は無理だが……。


 ていうか。


『お前らちょっとくっつきすぎ』

『え、駄目?』

『駄目じゃないけど歩きにくい』


 何で俺の下を歩くんだお前ら。

 マジで歩きにくいからやめてくれ。

 蹴飛ばしてしまうぞ。


『兄さん』

『お? なんだ?』


 少し後ろでガンマが目を凝らしていた。

 前方に何かあるのかと思い、俺も見てみるが特に何もない。

 少し開けているので、隣の山は見えているのだが……。


 もう一度ガンマを見てみるが、やはり何かを見ているように集中していた。

 何があるというのだろうか。


『どうしたんだ?』

『なんか、向こうの山で戦ってる』

『え?』


 言われてもう一度見てみるが、やはり何もいない。

 というか、向こうの山は遠くて見えないのだ。

 だがガンマは見えているという。


 ……ガンマ、もしかして目がいいのか……?

 お父さん譲りじゃん。

 なんで今まで隠してたんだよ……。

 まぁ自分ではそれが長けてるとか分からないもんな。


 となると、ガンマは積極的に連れて出たほうが役に立ちそうだ。

 今度からは連れて行こう。


『何が戦ってるかわかるか?』

『……炎魔法を使ってるっぽい。結構強力だよ』

『へぇ……』


 炎魔法か。

 それはなかなか興味深い。

 俺もまだ勉強不足だから、是非とも戦って魔法をパクりたいものだ。

 じゃあ、とりあえずそれを制圧しに行きますか。

 炎魔法が使えるシャロもいるしな。

 シャロにとっても勉強になるだろう。


 スンッ。


『ん……?』


 なんだ?

 なんか俺たちと近しい匂いがする。

 だけど皆じゃない……。


『ガンマ』

『おう、俺も気が付いた。仲間かもな……』

『どうする?』

『どうするってそりゃ……。任せる』


 そこで投げるんかい。

 まぁ……行くしかないよな。


 同族発見したんだからよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る