第40話

「…………」

「なんで黙ってるの?」

「えっと……なんて言ったらいいのか……」

 彼が声を出して笑った。

 俺も笑った。

 なんとも彼女らしくて、可愛らしくて……。


 ――そうか

 俺も玲のことがずっと好きだったんだ

 でも傷付くのが怖くて、ずっと自分の気持ちに気付かないふりをしてたんだな


「あいつも自分の気持ちに気付いたよ。ずっと君のことが好きだったって」

「……そうなのね」

 彼女が口元を手で押さえる。その目から涙が溢れて流れ出した。

「どうしたの? なにか、気に障ったかな」

「違うの……私……どうしたのかしら」


 泣きながら微笑んでいる彼女を、とても愛しいと思った

 できることならこの手でその涙を拭いてやりたい……

 でも今、俺の体を動かせるのは俺じゃない


「泣かないで」

 そう言いながら、彼が手の平で彼女の涙を拭いた。

 その手の感触が俺に伝わる。とても暖かく柔らかい涙の感触で、俺の胸はいっぱいになる。

「……どうも僕にはあまり時間がないようだ」

 彼女は涙を止めようともせず俺たちを見る。

「あなたにもそれが分かるのね。でも、決して消えてしまう訳ではないのよ」

「そのようだね。元に戻る……か」


 元に……?


「こんなことならやっぱり夢の中で君を殺しておけばよかった。そしたら二人で永遠に……夢を見続けられたのに」



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