3-2
藪から飛び出してきたその人は、空色のワンピースを着ていて、仮面ライダーのお面をつけていた。
「えーっと……仮面ライダー! さ、参上!」
その人は僕とほぼ同じタイミングで藪から2人の前に飛び出してきて何かよく分からないポーズを決めた。まぁ幾分プリキュアよりかっこいい登場だったかもしれない。
2人は口をぽかんと開けたまま、何が何だか分からない、といった表情をしている。
そりゃそうだ、ゾンビにプリキュア(男)に仮面ライダー(女?)がいきなり逢引きの場に出てきたら誰だってそうなる。
「えと、だ、誰ですか?」
ショウくんはごくまともな質問をした。僕と仮面ライダーは言葉に詰まる。
「私は、えーっと怪しいものじゃないです!」
その声は女の人のものだった。
僕も堂々と「僕だって怪しいものではないです!」と言ったけれど、怪しくない人は絶対に言わないであろうセリフを堂々と言っていることに自分で気付く。
「……」
しばらく気まずい沈黙が流れた。
「……と、とにかく、ここはまかせて、明るい所へ逃げるんだ!」
正義のヒーローが言いそうなセリフを言うと、小さい僕と咲ちゃんは、ついに立ち上がった。
「あの……あ、その……ありがとうございます。行こう咲ちゃん」
小さい僕は咲ちゃんの手を引いて立ち上がった。
咲ちゃんは僕と謎の仮面ライダー(女性)に軽くお辞儀をして、一緒に明るいお祭りの方に逃げていった。
よかった。
しかしこの状況をどうするか。目の前にはゾンビ、隣には仮面ライダー(女性)。
プリキュアと仮面ライダーが共闘したことなんてかつてあるのだろうか。
僕が迷っている間にもゾンビはゆっくり近づいてきて……と思いきや、その場で立ち止まって何やら腰をくねくねさせて踊り? を踊り始めた。
僕が頭に「?」マークを浮かべてゾンビを警戒していると、その隣でまたボゴッと超巨大な大根を抜くような音がして骸骨が地面から生えてきた。
嘘のように骨だけで動く骸骨は、しかしゾンビと同じように踊りだした。
なんでこいつら踊ってるんだ? 僕の油断を誘っているのだろうか。
そうしていると今度はボゴッボゴボゴボゴッと連続で音がして雪女やろくろ首やお皿を数えている女の人や口裂け女が次々に出てきた。
そして……なぜかゾンビたちと一緒にラインダンスを踊りだした。
なにこれ?
もう恐怖と言うよりもシュールさが勝ってしまって、どうしていいのかわからない。
夢にしてはテイストが全く安定していない。支離滅裂だ。
あまりにも緊張感が無いゾンビ達に呆気にとられながら、僕はもう一人怪しい存在がいたことを思い出した。
仮面ライダー(女性)はゾンビたちのラインダンスをじーっと眺めていた。
「あの〜すいません」
「あ、は、はい!」
僕が仮面ライダー(女性)に話しかけると、びっくりしたような声を上げてこちらを向いた。
僕はプリキュアのお面を外して尋ねる。
「あのー確認なんですけど、あなたは人間、ですよね。何かこの状況について、分かること、あります?」
そうやって助けを求めた。が、帰ってきた言葉は意外なものだった。
「あれ? もしかしてショウ……くん?」
「え?」
どうして僕の名前を? まさか知り合い? こんな怪しい知り合いいたっけかな。
そう思っていたら、次の瞬間謎が解けた。
仮面ライダー(女性)が仮面を取ったのだ。
「私なんだけど、わかる?」
「え……」
そこにあったのは、僕がどうしても忘れることできない顔だった。
「咲……ちゃん?」
彼女はこくりと頷いた。
僕と咲ちゃんの奇跡みたいな再開は、ゾンビや雪女たちのラインダンスという奇妙すぎるバックのもとで起こった。
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