3-3
「あ……え……え?」
仮面を外した仮面ライダーの前で僕はパニックになっていた。
思考回路はショート寸前、目の前で起きているのは奇跡なのか夢なのか、とにかく大人の咲ちゃんを前にして何を話したらいいのかことばが全然出なくなってしまった。
咲ちゃんはこっちを見て嬉しそうな、少し恥ずかしそうな顔をしている。肩まで伸ばした髪の毛は茶色がかっていてゆるく巻いてあって、なんだか女子大生って感じだ。
でも顔立ちは昔の咲ちゃんとあまり変わらなかった。
「えーっと、久しぶりショウくん。中学校以来だから、もう5年ぐらいになるのかな」
「あーえっと、あ、うん。そ、そう。……あえっと、高校が3年間で大学が3年目だから、5年ちょいだ」
いやまて、こんな状況なのにそんな細かいことはどうでもいい。
とにかく落ち着け僕、ここは夢の世界だ。じゃなきゃゾンビたちは出てこない、目の前にいるのも夢の中の咲ちゃんだ。
あ、なるほど、だからこんなにかわいいんだ、納得。
そう思うと、夢の中でまた咲ちゃんのことを思い出してしまったことで胸が苦しくて悲しくなってきた。
だって夢の中で再会できても、現実に戻れば忘れてしまうのに、僕は一体何を期待してるんだ、未練がましいったらないじゃないか。
でもそうなんだよな、ここは現実じゃないことは確かなんだから、一体何を緊張する必要があるんだ。
早くこんな
「えっと、咲ちゃん。とにかく状況を整理してもいいかな」
「あ、うん、そうだね」
どうしてこんなことになったんだろう。
まず僕は咲ちゃんに、自分の状況を告げた。でも子どもの頃の僕たちを監視していたことだけは恥ずかしいから伏せておく。
すると咲ちゃんは目を見開いた。
「えっ、ショウくんもなの?」
「ん、どういうこと?」
「私もさっきお化け屋敷に入ったの。えっとね、ほら、覚えてる? 昔、私とショウくんの2人でお化け屋敷に入ったことがあったじゃない? あの二海神社のお祭りのさ」
僕は頷く。忘れるはずはない。
「あの場所に今年もお化け屋敷が出てたの。それで、中に入って、[入口か出口]って書いてある扉を開けたら、ここにいたの」
「なるほど、僕と似たような感じだ」
果たしてこの咲ちゃんが本物なのかということはさておき、その話を信じるのだとすればおかしな点がある。
2人が入ったお化け屋敷はかなり離れているということだ。
僕は下宿先の、咲ちゃんは僕の地元のお化け屋敷に入ったわけだから、電車でも片道3時間はかかる距離だ。
2人してそれぞれ違うお化け屋敷に入ったと思っいたら出会っていた、なんてそんな珍妙奇天烈摩訶不思議なことがあるだろうか。
ところが、咲ちゃんは何かピンときたような顔をした。
「何かわかった?」
と、僕が尋ねると咲ちゃんは慌てた様子で胸の前で手を振った。
「え? あ、ううん。ごめんね、なんでもないの」
その時の咲ちゃん、なんだかわからないけど少し楽しそうな顔をしているようにも見えた。
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