2-6

 デートもそろそろ終わりが近づいてきた。

 夜遅くなると学校の先生達が見回りに来るので校区内のお祭りは保護者がいないと夜7時半までには家に帰らなくちゃいけないと相場が決まっている。


 だけど2人はあのお好み焼きの屋台の前にいて、なにやら困った顔をしている。

「お好み焼きのお金まで使っちゃってたや」

「えー、最後に一緒に食べよって言ってたのに……」


 ははぁ、ショウくんのやつ、さっき射的で何度も失敗しまくってたからお金が尽きてしまったんだな。にしても昔から僕には計画性がないなぁ。


 こんなに楽しいお祭りの時間を過ごしたショウくんは羨ましくもあり、ちょっといい気味だども思う。


 ……いや、きっと咲ちゃんにいいとこ見せたくて頑張った結果だな。

 いじらしいではないか、ショウくん。


 方や僕はどうしただろうか。迷ったときはいつも止まってしまって、なにもしなかったんじゃないか。

 小さい時の僕を見ていると、自責と羨望と愛おしい気持ちがごちゃ混ぜになっていた。


 気がつけば、僕は咲ちゃんにしおらしく反省しているショウくんに「ちょっときみ」と声をかけていた。


「お兄さん実は、君の持ってるそのヨーヨーが欲しいんだ。このお祭りの割引券と交換してくれないかい?」

 僕が声をかけると2人は固まっていた。


 それもそうだ、見ず知らずの、しかもプリキュアのお面をつけた成人男性なんて、しまっちゃうおじさんの次に怖い存在だ。


 咲ちゃんは不安そうな顔でショウくんの裾をぎゅっと掴んだ。

 ショウくんは咲ちゃんを庇うようにして前に出て言う。


「あ、あの……ごめんなさい、知らない人から食べ物とかお金はもらっちゃいけないことになってるんです」

「そうか、でもほらこれ割引券だからさ、お金じゃないから大丈夫だよ。はい、どうぞ、じゃあねー」


 ヨーヨーと交換するとか言っておきながらショウくんの手に無理やり割引券を押し付けて僕はその場をそそくさと立ち去る。

 途中で振り返って「彼女をがっかりさせちゃだめだぞ、大事にしろよ」と、ついノリで言てしまった。


 そして神社を出たふりをして境内の外を囲っている雑木林の中に入って二人の様子を見守ることにした。


「なにやってんだかなー」

 さっきの自分の言動を思い出してため息をつく。小さい頃の自分を助けるなんて、そんなことしても未来は変わるわけでもないのにな。


 ……さて、2人はどこかな。

 僕がスネークしてると、2人は僕の目の前の暗い道を横切って行った。そっちは本殿とは違う人気のない建物の方に続く道だ。


 なんでそんな方へ?


 蚊がとんできて僕の足やら腕やらを刺したみたいで、僕は痒いのを我慢しなけりゃいけなかった。


 一体何するつもりだ?


 僕は2人の後をこそこそ追いながら想像をふくらませた。人気のない場所で男女2人がすることって何だ?。


 ……いや、まさか。

 まさかまさか。

 まさか。

 まだ小学生だよ? そんな、ははは、ばかな。

 いや! それはだめです、お父さんは許しませんよ。


 僕はよく分からない使命感に駆られて雑木林の中で2人を監視した。

 こうなったら蚊に刺されるとか、クモの糸が顔につくとか、そんなこと構ってられなかった。

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