2-3
外は神社の夜の境内や周りの雑木林が見えた。
祭囃子や人々の喧騒が聞こえてくる。
ドキドキを楽しむ間もなく終わってしまったな。別の考え事してたからだけど。
まぁでもそれだけ大した仕掛けもなかったし。一流おばけ屋敷師とは何だったのか、肩透かしを食らった気分だ。
でもまぁいい、これで商品券ゲットだ。
振り返って受け付けに行こうとした瞬間、愕然とした。
「え……」
無いのだ。
お化け屋敷が無くなっていた。
あの長い行列も、怪しいおじさんも、年季の入ったお化け達も綺麗さっぱりいなくなっていた。
それに、なにか辺りの様子が違うような気がする、違和感がある。
よく観察すると、境内の作りは見覚えがあるけれど、並んでいる夜店の種類も、聞こえてくる祭囃子も、さっきと違うものになっている。
どうしてだろう?。
さらにぐるりと辺りを見回すと気づいたことがあった。
同じ海原神社のはずなのに、石造りの参道も、ろうそくの火が揺らめく灯篭も、人々の喧噪も、夜店に垂れている赤い提灯も。なにか分からないけれど、どこか懐かしいような気がするんだ。
そうだ、定食屋のおばちゃんの夜店はどうなっているだろう。
衝き動かされるようにおばちゃんの夜店のところまで行くと、ちゃんとお店が出ていてほっとした。
でも、正面に立ってみた時、今まで感じていた不思議な感覚が確信へと変わった。
若かったのだ、おばちゃんが。髪の毛もサラッとしてるし、シワもないし、アクセサリーの輝きもどこか鋭さがある。改めて見て見れば夜店もどこか新しい感じがする。
その時、小学校の3・4年生ぐらいと思わしき女の子がひょいと出てきて「お母さんいってくるねー」と手を振っていた。あれはもしかして沙耶さんだろうか。
ということは、もしかしてタイムスリップしてしまったのだろうか。
でもなんで? いやこれ、神社の外はどうなってるんだろう。
下宿や大学がある方に向けて歩き出そうとした、その時だった。
神社の入り口に建っている鳥居の下に男の子が立っていた。
何故だかわからないけど、視線がひかれた。
短パンにキャラクターもののTシャツといった、いかにも小学生男子といった格好をして、チェーンのついた財布をぐるぐる回しながら誰かを待っているようだ。
顔を見て、視線がひかれた理由がわかった。
あの子、小さい頃の僕だ。
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