転生とかチートとかどうでもいいのでさっさと死んでください。
つちのこ二世
第1話 お願いです理を乱さないでください。
深夜の宿の一室、他の部屋より値段が遥かに高いスイートルームのベットにケモ耳の少女とエルフに挟まれて寝ている少年がいる、しかも全裸で。3人仲良く全裸。
また、このパターンかとこの光景を見て忍び入った少女はそっと溜息をつく。
なんなんだ、こいつはたしかに前世で不慮の死を遂げたのだろう。やりきれなかったこともきっと沢山あったはずだ。
それでも、あちらの世界の輪廻の理を抜けて、この世界の輪廻に理を外れて割り込んであまつさえ勇者と名乗るのならばこんなことにうつつを抜かさないで欲しい。
狙いがずれないように、思考が乱れないように。スゥーと息を吸って止める。
そして、ひと思いに少年─勇者─の心臓にレイピアを突き刺そうとしてまっすぐに降ろした切っ先が皮膚を破ろうとした瞬間。
キィイイイイーンという音と青い光が部屋を駆け巡った。
しまった、防御系の加護か
一瞬の判断で後ろに飛んで下がると、流石に異変に気がついたらしい勇者御一行(全裸)が目を覚ました。
「夜襲ですかっ」エルフが喚く
「このお方が勇者と知っての狼藉ですかっ」もう片方のケモ耳も喚く
そしてついに勇者も口を開いた
「お、落ち着け、何があったのか知らないがまだきっとやり直せる」
カッコつけているが全裸なので滑稽である
「勇者と知って?何があったのか知らない?やり直せる?」
抑えきれない感情が体中をうねり駆け巡る。
「えぇ、お前達が勇者であることを知っての上よ。何があったのか知らない?えぇ、そうでしょうね、なにも知らないから勇者なんてことも忘れて自分の欲望、煩悩にあるがままでいられんでしょ!」
言葉が止まらない。
「貴様の所業は知ってる、この世界で巡る魂をもった本物の勇者を自分のために殺して武器を奪った。人間に害を与えず慎ましく生きていたゴブリンの一家を皆殺しにした、他にも沢山ある、あんたが一番知ってるでしょ」
こいつは知らない、古い友人が一家諸共殺されて恐怖と悲しみに暮れるゴブリンの叫びも、殺された勇者の仲間の悲しみの声も。
その全てはこいつが富と名声を得る為だけの犠牲だ。
「私は貴様らのような奴らを何人、何十人と殺してきた。やり直せないし、やり直すつもりもないっ」
あの日から私は成すべきことを成すと心に決めた。
思考を落ち着かせ床を蹴る。最初に取り巻きの女を無力化する。そして間髪入れずに勇者へ攻撃する
とっさに勇者は剣を取るが繰り出される光の速さの剣についていけない。
たとえ、防御系の加護と言えども理から外れた力。こう集中的に攻撃を喰らえば必ず綻びが出てくる。そうしている間に勇者の皮膚が破れ一筋の血が流れる。そこからは簡単だ、袋を裂く要領で肉体を切ればいい。
勇者の汚い絶叫が響く
あっけなく事切れた死体を前に
「もうこちらの世界に来るな屑が、」
もうそろそろ町の衛兵が来るころなので深くフードを被り窓から闇に逃げる。
「なにもされなかった?無事?」
「えぇ、完璧に殺したわ」
闇に紛れ仲間に少女は先程とは打って変わって柔らかく微笑んだ。
転生とかチートとかどうでもいいのでさっさと死んでください。 つちのこ二世 @fzitika_mati
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