第6話
ん、なんか寒い? もうあったかくなってきたと思ったが、まだ寒かったか。布団……、ない?
「お目覚めですか、主」
なんか頭上から声が、きこえ……
「は!?」
俺はなぜ見知らぬ美人に膝枕されている!? あ、でもかなり固い、って、あれ? 頭は地面についている? え、これ本当にどういう状況? なに、主って。
「ああ、ご無事なようで安心いたしました。
急に倒れられるので心配しましたよ」
いやいやいや、まてまて。頭がついていかない。一回、一回おちつこう。深呼吸して……。はぁ、少し落ち着いた気がする。さすがにこのまま無視して帰るわけにはいかない。仕方がない、向き合うか。
まあこちらの息が整うまで待っていてくれたあたり、この人? はやさしい気がする。なんか嬉しそうににこにこしている。
「あの、あなたは一体?」
「おや、ご存じで呼び出したのではないのですね。
私はシャリラント、ミベラの神剣と呼ばれるものです」
シャリラント? それにミベラの神剣? いや、聞いても全くわからない。でも本当に神剣、だったのか。正直ただの剣の形した石だと思っていた。
「もしかして、本当にご存じない……?
私の名、はご存じなくても仕方ありませんが、ミベラの神剣も?」
信じられない、といった顔をされても困る。本当にわからないから。なんか、ぶつぶつ言っているのやめてもらっていいですかね。ショック受けさせてしまったのは申し訳ないけれど。
「あの、よければ説明していただけませんか?」
「そうですね、どこから説明したらいいのか……。
その前に主のことはなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「え、あー……。
俺のことはハール、と呼んでくれ。
そもそも俺が主なのか?」
「かしこまりました、ハール、ですね。
もちろんあなたが主です。
私に力を分けてくださったでしょう?」
「ああ、あの無理やり引き出されたやつ」
「おかげでこうして目覚めることができました。
では説明をさせていただきますね」
優雅に一礼すると、シャリラントは説明を始めてくれた。
まず神剣の話そのもののから。まず、神が自分を手伝うものとして、シャリラントのような神使が生み出された。その神使が地に姿を現す依り代として、神剣が存在している。
そんな神剣は全部で7本あり、その特性によって○○の神剣、と呼ばれている。その中でもこのミベラの神剣は最も特別である。ほかの6つの剣、すべての特性を備えているというのだから、確かに特別だろう。ていうか、チートだ。
ちなみにほかの神剣は癒しの神剣ヒースラーン、守りの神剣シールディリア、戦いの神剣ファイガーラ、魔法の神剣マジカンテ、料理の神剣クックマイン、魔獣の神剣アニルージだ。
ここまで聞いて、本当にふと思い出したことがある。あの時のことなんてほとんど覚えていないのに、なんでこんな時だけ……。あの時あいつは確かに言っていた、気がする。俺に『特別』なプレゼントをあげる、と。
ねえ、神様? 何度だっていうけどさ……。
「俺はこういうのを望んでいるわけじゃないー!!!」
はぁ、叫んで少しはすっきりした。というか、あいつは一体どうやって俺が『特別』になりたいって知った? 絶対まともなルートで聞いてないだろ。なんかねじ曲がっている。ああ、平凡がお似合いの俺が『特別』とかを望んだのが悪かったのか?
「お、驚きました……。
あなたは私が必要ないと、そうおっしゃるのですか?」
「え?
あー、そういうわけじゃない。
正直何かあったときのための力はほしい。
今のは、まあ気にしないでくれ」
確かに本人前にして、さっきのはよくなかったかもしれない。だが、許してほしい。もろもろの文句はすべてあいつあてでよろしく。って、驚きでいまだに固まっている。いや、悪かったって。
「もう大丈夫です……」
「それは良かった」
あの後なんとか、正気を取り戻してもらって今に至る。そろそろ戻らないといけないんだよな。それにしても神剣に神使って……。また大層なものが出てきたよな。
「……あれ?
神使って普通動物では?」
「動物がお好みでしたら、動物にも」
え!? 今何した? 一回転しただけだよね? なんでそれで大型犬になっているの……。
「我々は形にとらわれません。
特に要望がありませんでしたら、こちらの姿でいる方が楽ですが」
そういうと、また元の姿に戻る。本当に一体何なんだ。いや、これはファンタジー。それ以上理解しようとするのをやめよう、うん。
「そうだ、君のことはなんと呼べばいい?」
「お好きなようにお呼びください。
私はただの剣、あなたの手となり戦う武器です」
まあ、確か剣だよね。『ただの』では絶対にないけど。
「じゃあ、シャリ、はなんか嫌だから……。
うーん……」
名前考えるの苦手なんだよね。だけどシャリはなんかご飯を思い出すから微妙。まあ、そのままシャリラントでもいいけれど、うん、それでいいや。もう戻らないと。
「じゃあシャリラント、よろしくね。
って俺の剣はどこ、に……」
なんだか妙に美しい装飾がなされた剣が見えるのだが? え、あれではないよね。だって、俺の剣は石だった。あんなきれいなやつじゃない。
あ、なんかとあるおのの話を思い出した。気分はあんな感じ。じゃなくて、なんかシャリラントがこっちにそれを持ってくるんだが。これですよ、とか言ってくるんだけど、本当になんの冗談?
「さあ、戻りましょう」
「え、え、ちょ、待って!?
戻りましょうってどこに?
いや、孤児院にだろうけれど、一緒に?」
「ふむ、そうですね。
では私は剣の中に戻りましょう。
お呼びいただければ、いつでも姿を現しましょう」
そういうとすぐに、ふっと剣に吸い込まれていきました。あはは、うん、さすがファンタジー。そういうことだ。ここ数年、完全にひと昔前の生活をしていたからすっかりここが剣と魔法のファンタジー世界だって忘れていたよ、うん。
「……帰ろう」
疲れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます