五章 暗闇より希望の光 その3
次の日、侍大蛇は外国の侵略者から国を守った英雄として東武国中に知れ渡った。
「これ以上強力な国の盾がどこにあろうか?」
「侍大蛇様カッコいい!」
「蛇光様の弟子になりてえ!」
「蛇光様にお仕えしたい!」
「蛇光様素敵!」
「国を救った英雄に乾杯!」
「見たかったぜ! 蛇光様の堂々たる勇姿。」
「今どちらに? お会いしたい!」
「兆の区の遊郭の町―論歩にいるらしいぜ。」
「そういや怪しい実を食べてる奴がいるらしい。」
「食べると我を忘れてものすごい力で暴れ回るらしいな。」
「隣の村が実を食べちまった者に襲われちまっただよ。」
「その特効薬となる実を蛇光様が特定の人を選んで渡してるらしいぞ。」
「ありがたや、ありがたや。」
「我らの敵を滅ぼし、我らの災いを直す蛇光様は仏じゃ。神じゃ。」
数年の刻をえて、侍大蛇の名は再び、東武国中に広まるようになった。一方でその論歩の町に幸灯はしばらくの間滞在していた。
(ふふ、この町は表でも裏でも稼げますね〜。しかし今日はいつもより人が多いですね。あれ?……あちらの建物女性がいっぱい。何かしら行ってみましょう。)
幸灯はそう思うと人ごみをくぐり抜けて中に入った。そこは普通の酒場だったが、多くの女性の真ん中に宮地 蛇光その人が座っていた。
「余のおごりぞ皆の衆、飲め歌え! 余が許す!」
蛇光はそう言いながら、女性という女性を褒めちぎっていた。
「余の姫になるか? 」
『キャー、蛇光様素敵い! なりたい! なりたい!』
その場にいた女性達は皆蛇光にメロメロだった。もちろん幸灯も例外ではなく、蛇光を見た瞬間虜になってしまった。
(か、かっこいいい! あれが蛇光さまああああ⁉︎ 素敵、素敵、ス、テ、キ! ふわぁ〜、まるで白馬の王子様みたい。素敵すぎます!)
幸灯も一瞬蛇光に近づこうとしたが、すぐに外に出て、自分の服を見てしまった。
(あんな素敵な方が、私なんかを相手にするはずない。)
落ち込んでしまった幸灯はとぼとぼと涙目になりながらその場を離れてしまった。
一方蛇光も幸灯が出たのを気づいていた。
(良い。実に良い。純粋で真っ直ぐな心に理不尽な自身の環境に対する憎悪。あやつなら千人目にいいかもしれない。)
・・・
・・・
一方同じ兆の区の村の跡地で戦闘が終わっていた。
「ふー、なんとか勝てた。」
括正は疲れで疲れ混んでいた。
「いやあ、君は本当に敵には容赦ないね。」
少し引き気味で一誠は歩いてきた。括正は淡々と答えた。
「僕はあなた様より格段に弱いので、敵に情けをかける余裕はない。」
「そうかい、そうかい。君は念力を身につけようとは思わないのかい? 弟子にしたいな〜。」
一誠はフレンドリーに括正に問いただした。
「僕は吸血鬼になりたいので、念力には興味ないっすね。お誘いは感謝ですが。」
括正は礼儀正しく返事をした。
「そうかー。君はトリッキーな戦い方できるから俺より念術の才能ありそうなんだけどなぁ。まあいいや。それよりこいつら、僕の言ってたマークあるかい?」
一誠は質問すると括正は死体を確認した。
「ありました蛇のマーク。どうやら怪しい実を配っていた彼らも蛇光の手下みたいですね。」
「やっぱりか。……これを食べた者のほとんどは我を忘れて暴走状態の吸血鬼になる。それとは逆に蛇光も自分と全国の自分に忠実な役人を利用して違う実を特定の人に配っている。それらを食った人はなんともない。……それが逆に怖いな。」
一誠は冷静に話していると、括正は話し出した。
「にしてもおかしな話ですな〜。手下には出くわすものの、侍大蛇が見つからない。何が偽の情報で何が本物かわからないとは。」
括正は頭をかいた。
「美の区の松平家は戦乱が始まってすぐに兆の区を支配圏に入れたのにおかしな話だ。一誠さん、侍大蛇は一体何がしたいんですか?」
「君が想像する最悪の倍以上のことだよ。具体的に言えば…」
一誠は初めて会った時のようにまた長々と括正と喋り出すのだった。
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