五章 暗闇より希望の光 その2

 大草原の上に美男子、侍大蛇―宮地 蛇光はつまらなそうに座っていた。

「今の余は全盛期にあらず。あの頃の力なくしてメリゴールの完全征服は難しい。だが余の力は火力のみに偏らず。……ん?」

 蛇光は我に還ると自分が複数の剣や魔法の杖、銃や槍など様々な武器を持った冒険者や賞金稼ぎにいつのまにか囲まれていることに気がついた。

「わざわざ海を渡りやってきたのか? 余を倒し、余を超えんと挑戦するのか?」

 蛇光は笑みを浮かべながら問いただした。女性剣士が高らかに応対した。

「ハハ、侍大蛇よ。故郷を安全圏と思うは愚かなり。お前を倒すために集まった精鋭よ!」

「笑止、笑止。精鋭? 集団で弱くなった余一人に挑む時点で小物なり。」

 蛇光はそう言うと、ため息をついた。

「火雷 狂矢、災狼、ひょっこの侍道化ですらたった一人でどんな敵にも挑むぞ。」

「舐めるなああ!」

 一人の男性魔術師が怒りで火の玉を放った。蛇光はそれをいとも簡単にデコピンで弾き消した。

「蛇ン苦!」

 蛇光はそう叫ぶと、その魔術師に向けて小さな蛇を手より解き放った。

「ヒッ、ひー!」

 魔術師は急いで、防御しようとするも蛇はあっさり魔法防御壁を破壊して、彼に噛み付いた。

「ぎゃああ!」

 男は一度噛まれるとあっさり命を落としてしまった。精鋭の集団は動揺を隠せなかった。

「余は機嫌が悪い。それでも挑むか?」

「刃物使いたちよ! ありったっけの飛斬だ!」

 もう一人の冒険者の指示で斬撃系の武器を持った者はみなおおおお! と叫ぶと蛇光目掛けて一斉に連続で撃ちまくった。

「遠距離系のみんなも専門なんだから撃ちまくれ!」

 弓や銃、鉄砲などを使う者も撃ちまくった。

「遅れをとるな! レッツマジック!」

 魔術師や僧侶、宣教師なども攻撃魔法を放った。砂ぼこりがその場所に舞った。

「いけるぞ、いけるぞ!」

「あたしかっこいい!」

「みんなで力を合わせれば、どんな困難にだって立ち向かえるんだ!」

「よっしゃあ!」

「報酬カモーン!」

 やがてみなが攻撃をやめた。

「やったか?」

「え? 嘘でしょ?」

 ほこりの中から、少しだけ血が流れている蛇光が立っていた。

「効いたぞ。少しな。」

「う、うわああああ!」

 何人かの人がその場を去ろうとした。しかし蛇光はこの時、大空に向かって四角を描いてからこう叫んだ。

「邪ン具ル示無!」

 すると、巨大な紫のキューブ型の結界が誕生した。

「え、壁?」

 逃げていた先端の者達は半透明な不気味な壁に立ち止まってしまった。

「触らない方がいい。毒だ。余を倒さんと破れんぞ。」

 蛇光はまだにやけていた。

「お前ら集団で一人をいじめて楽しかったか? 楽しかったよなー! えー⁉︎ どうなんだ⁉︎ おい!……人をさんざん殴っておいて、自分が殴られそうになったら逃げ出す? あきれた精鋭集団だ。」

 銃光は舌を少し出しながらからかい始めた。

「お前らも余とたいして変わらぬ怪人よ。所詮この世の者はみな怪人なのさ。」

 蛇光はそう言うと、殺意をあげた。

「さて……お前らにとってこれはいわゆるレイド戦だな。いい運動にもなるしふさわしい姿に変身しよう!しゃあああああ!」

 そう叫ぶと黒い煙が蛇光を覆い、巨大な蛇に変身した。

「闇と混沌の蛇を貴様らは倒せるか?」

 勇者達は破れかぶれで攻撃を侍大蛇に仕掛けた。しかし皮膚は硬く敗れる者はいなく、蛇の尻尾の一振りや行進や突撃で多くのものが命を失った。やがて全滅したので、蛇光は結界を解いた。

「美味だった。……デザートとは気が利いている。」

 この精鋭の魔術師の一人が、死ぬ前に自動的に動くゴーレム兵を生み出したのだ。サイズは蛇となった蛇光と同じくらいだった。

「付き合ってやるのも一興。だがまだ赤の戦士には見つかりたくはない。一気に決めよう。」

 蛇光は自分の蛇の口を大きく開けて、毒を溜めた。

あん咆哮ほうこう!」

 彼の口から液体のようなビーム状の毒の波が放出され、ゴーレム兵は跡形もなく溶けてしまった。


・・・

・・・


「すみません、このくらいの身長の黒髪で赤い服の女の子見ませんでした。」

「怪盗獅子騙しが最近出現した場所って知りませんか?」

「お嬢さん僕とデートしませんか?」

 括正は道中の色々な人に幸灯のいそうな場所を探していた。

「まいったな〜。ようやくお仕えできるって時に見つからないんだもん。」

 括正は茶屋でゆっくりしていた。

(吸血鬼になったら、空飛べて楽に探せるのになぁ。手元にないのはドカーンダイヤのみ。これに関してもまいったな〜。)

「人探しの旅かい?」

 急に括正は隣に座っていた人物に話しかけられた。括正が知っている人物だった。

「あ、赤の戦士いいいいいいい!」

「いや、声でかいな!」

 一誠は思わずツッコミを入れた。括正は激しく動揺した。目の前に伝説がいるのだから仕方ないだろ。

「え? いや、え? あの、お、ど、く、え? いや、その…。」

「君の素直なリアクションにまんまる、おっけいサンキュー! だけどレッツクールダウン!」

 しばらく括正が落ち着いてから一誠は喋り始めた。

「君のワンダフルストーリー、聞かせてくれないかい?」

 そう一誠が言うと括正はうれしそうに語り出した。

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