三章 侍道化の珍冒険 その9

 さて、ビリーが倒れる前に狂矢に言った傭兵三人を紹介するために、この日の朝に時を遡らなければいけない。その日の朝、蓮の区にある村が襲撃を受けていた。

「きゃあああ!」

「ヘルプミー!」

「もうおしまいだぁ〜!」

「俺失恋したばっかだしみんな一緒に地獄行けばええやないの。」

 様々な声が飛び交う中、村の中心には三人の怪人が君臨していた。そこにはまだ彼らと戦う度胸のある者が必死に抵抗していた。

「鉛玉撃ちまくりんぐ!あの小せえ奴からだ!」

 ばばばばばばーん! 銃や鉄砲を持った者が130cmばかりの黒いヒゲを生やした小さな怪人を撃ちまくった。だが。

「ヒョヒョヒョッ! 当たらんぞい!」

 武器である斧を振り払い、器用に全ての玉を弾いた。ストレスのあまり狙撃手の一人が怒りを吐いた。

「こいつー! チビのくせにー!」

「ヒョヒョ、小さきを弱きと思うとは滑稽な。」

 怪人の種族はドワーフ。異名は銭取。名はコイン・ホッシース。

「ヒョーイッ!」

 コインはあっという間に狙撃達手に急接近して、反復横跳びを繰り返しながら、一人一人に強烈な打撃を喰らわしてぶっ飛ばした。

「ヒョヒョ、武器で倒す価値なーし!」

 ドワーフが勝ち誇っている最中、大柄な男達がさらに大柄な目玉が一つの怪人と対峙していた。しかし、恐怖で男達はなかなか打ってでないため、奴が挑発した。

「どっすんの? どっすんの? おたくらヘタレでこの国どっすんの?」

 ようやく武闘派集団の中で一人勇気を出して、士気を上げようとした者がいた。

「みな勇気を振り絞れ! 俺たちの人生の主人公は俺たちだー!」

 この男の発言に目玉一個の怪人は賞賛した。

「ほうほう、いいこと言ったな。拍手したいとこだが片手が金棒で塞がれているから口でしよう。パチパチパチパチパチパチ。そんなきんみに……目からビーム。」

 一つしかない目玉から黄色い光線が放たれた。

「あばあああ!」

 直接喰らった相手は丸焦げになって倒れた。

「ウヒ、きんみが主人公の物語が終わったな。ゴールおめでとうなんだな。」

 怪人の種族はサイクロップス。異名は一つ目傭兵。名はマイキー・ビフ。彼は自分のルールで敵を倒していった。

「きんみたちは目からビーム、きんみたちは金棒でバコーン、きんみたちは目からビーム、きんみたちは金棒でバコーン、きんみたちは目からビーム、きんみたちは金棒でバコーン、きんみたちは目からビーム、きんみたちは金棒でバコーン、っと見せかけてお待ちかね目からビーム。」

 戦士達は丸焦げになったり、高く打ち上げられたり、散々である。一方で最も豪快に村人の戦士をなぎ倒す怪人がいた。顔が牛に近く、体が人に近い赤毛に覆われたその化け物はコインより大きな斧で暴れていた。

「弱えな、お前らの体も心もなぁ、おい! 恐怖と殺意が入り混じってらあ!」

 なぜかは別の話、心を読めるこの怪人の種族はミノタウロス。異名は地響き。名はレドブル・ウィング。血ふぶきを楽しんでいたレドブルに村の老人が叫んだ。

「そこまでじゃ、牛の妖怪め! 村長のわしが相手ぞい!」

 レドブルは一瞬村長と目を合わせると、ニヤリと微笑んだ。

「お前は俺よりクズだな。ギリギリで助けに入って英雄やった方が村長としての株が上がりやすいって魂胆か?」

 レドブルの発言に村の村長は汗を流した。何人かの殺意が村長に向かれるなか、レドブルは喋り続けた。

「もっとも、お前の魔法じゃ俺の技と渡り合えんがな。」

「え、えーい! デタラメを! 牛丼にしてくれるわい! 行くぞい!」

 村長は杖を取り出して魔法陣を絵描き、火の玉を一発レドブルに向かって放った。するとレドブルは、高く斧を空にあげた。

「軟骨武乱致!」

 そう叫びながら豪快に地面を叩くと、斧が当たった地面から老人に向かって大きなヒビが割れると同時に風がヒビから湧き出て火の玉を一瞬で消してしまったと同時にヒビの凄まじい風漏れが慌てた老人に直撃した。

「ヒョエーい!」

 老人はそう叫ぶと、宙を舞いレドブルの前に仰向けに倒れた。

「答えるぞい。お主ら、外国から来たんじゃろ? この国に何があると言うのだ?」

 老人の質問にレドブルは不敵な笑みで答えた。

「じじいよ。度胸に免じて答えてやる。依頼主は海賊ビリー。俺たちが欲しいのは最近東武国の人間が海から拾い上げたと噂されている海剛石だ。具体的にどこにあるかは知らねえ。だから俺たちは海剛石を見つけるまで、たとえこの国が荒地と化しても暴れるつもりだ。」

 レドブルはそう言うと、牛と同じ自分の足で老人を踏みつけて、殺した。あらかた暴れ終わったコインとマイキーがレドブルの方へ歩み寄ってきた。

「どっすんの?」

 レドブルに質問するマイキーにコインは舌舐めずりをしながら反応する。

「決まっておろう。暴れて脅して金奪って、そして海剛石ゲットじゃぞい。」

 レドブルは全てが粉々になった村の中で大空を仰ぎながら大声でこう叫んだ。

「東武国よ、聴こえるか! 命が消えゆく悲劇の唄が! これがメルゴールに名が轟く怪人なり!」

 この日だけで、蓮の区にある5個以上の村が壊滅状態となった。

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