第11話 ホウカゴカツドウ!

 放課後、掃除当番だったため少し遅くなり部室に向かった。てか、掃除当番とかパリピたちが喋りながら掃除に取り組むからまったく進まないんだよなあ……。僕は当然その会話に入れないし何かの間違いで入っても怖いからひたすら掃除するから僕が教室の掃除すべてやってるまである。普通につらい……。余談だけど、教室掃除で最初の割り振りで毎回率先して黒板係になって黒板消しと黒板消しクリーナーを交互にちんたらやって時間潰してるクズいるよね。あれやってるとマジで嫌われるから気を付けたほうがいいゾ。まあ僕のことなんだけど。


 そんなこんなで、掃除が終わって部室に向かう。「相談室」とかかれたドアをノックする。


「どうぞー」


「掃除当番でちょい遅れたすまん」


「ちゃんと来てくれるのは律儀だよね」


「いや、部活だし約束だし普通に行くでしょ」


「常人じゃないから常識は通用しないのかと……」


「辛辣過ぎませんかね……」


「いや、半分嘘よ。来てくれて本当にありがとう」


「半分なのが釈然としないけどまあいいわ」


 半分ってなんだよ。半分は優しさなの?頭痛薬かよ。


「結論から言うと、私は高校生らしいことをしたいからこの部活に入ったのよ。せっかくのJKなんだし」


「はい?」


「ここは心理学研究同好会なのよ」


「そんな名前だっけか……」


 なんか、小石川先生に流されて適当に入部したけど仁科さんは僕の前から入部してるはずなんだ。


「実は私は1年生の頃からこの部活に入っているのよ」


「マジで……?」


 なんでよりにもよってこんな生産性がクソほどもない部活に入っちゃたの?高校生らしいもといJKらしい学校生活からもっとも離れているんですけど、それは大丈夫なんですかね……?


「でもこの部活、小石川先生があんな感じだし卒業した先輩たちも形だけ所属してた部活だったの」


「それ意味あるの?」


「去年新任の小石川先生はゆるい部活の顧問で休日を妨げられずに済み、私たち部員は適宜勉強を教えてもらえるWin-Winの関係だったわけ」


「最低なWin-Winだなあ……」


「小石川先生は先輩たちが卒業してしまって伝統もよくわからない部活の扱いに困っていて、かつ、何とかして楽をしたいって気持ちもあって私を部長に任命して一緒にこれから考えていこうって言われたのよ」


「なるほど……」


 あの先生適当だなあ……。それで、僕も駆り出されたのか。


「先生は件の野望を実行したいっていうことだけど、私も私でしたいことがあるのよ」


「具体的になにしたいの?」


「私も心理学に少しだけ興味があったのよ。だから、それに関することがしたい」


「普通に目的あっての入部だったのか……」


「論理的に人間の心理を理解したいってのもあるのよ」


「論理的に考えないと上手くいかない人間関係とかいらなくないっすかね……?」


「まあぶっちゃけた話、私もあわよくばスクールカーストをぶっ壊すってのに興味がある」


「結局そこに辿り着くのか……」


「セ◯シくん理論よ。どれを選択しても方角さえ正しければ目的地にたどり着くのよ」


「僕はの◯太くん以下のスペックなんだよなあ……」


「人の不幸を願い、人のしあわせに嫉妬してるようじゃね……」


「やだー、遠回しにゴミクズ人間って言ってるじゃないですかー」


 てか、君も大概同じじゃね?って言いかけたけどそれ言ったらマジでゴミクズ人間になるからやめとく。


「まあ、杜若くんはゴミクズより一個下の扱い受けてる気がするけど……」


「もしかして僕に憲法は適用されてないの……?」


 知らないうちに学校生活における人権が剥奪されてたとかこのご時世だったら僕より先に人権団体が動くよ?

 実際、剥奪されているんですけどね、初見さん。


「とにかく、せっかく心理学研究同好会っていう名前を冠しているんだからそれに沿って活動していきましょうよ!ダメ……?」


「まあ、いいんですけど……」


 そんな普段教室でしない悲しそうな顔をしながら上目遣いで聞いてきたらそんなの断れるわけないじゃん。つくづく美少女は得だなって思う。


「これから私と熱い部活動をしましょうよ」


「なにそれ告白なの?」


「いや全然違うけど」


 即、否定された。


「逆に……あなたは本当に人を好きになったことがあるの?私は、……ない」


「申し訳ないけど僕なんて女の子に話しかけられただけで好きになっちゃうレベルだよ」


「じゃあいいじゃない。愛とか恋とか友情とか嘘っぽくて嫌いだから」


「……だから、あなたとなら青春できると思うのよ」


 僕のおどけた返しに一切反応せず仁科さんはそう言った。僕の本音を透かされたようで少しドキッとしてしまった。まるで、「あなたもそうなのでしょ?」という問いが含まれているようだった。その通りだ。僕は本当に人を好きになったことなんかない。それどころか、本当の意味での友達なんかできたことは一度たりともないのだ。


「青春も嘘っぽいと思うけどね」


 心では共感しながら口では斜に構えたことをつい言ってしまう。厭世観で僕に勝とうだなんて100光年早い。伊達にぼっちやってないのだ。


「なら、それを本物かどうか確かめたいから協力してって美少女が言ったら協力してくれる?」


「自分で美少女って言っちゃうのかよ……」


「自称でも他称でもそうならそれは事実でしょ。あなたから言質も取ってる」


「ええ……」


 この子初めて話した時、もっと大人しい子なのかなって思ったけど遂に本性現したね。

 何を考えてるのかわからないけどそんなのお互い様なんだろうなあ……。


「だから、楽しい部活にしていきましょうよ」


「……教室でもそんな風に笑えばいいのに」


「なにそれキモい」


 辞めてぇ……。でも、その教室で見せない屈託のない極上スマイルは僕だけにくれたんだよなとか本当に気持ち悪いことを考えてしまったからおあいこってことで手を打とう。

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