限度、制約


 妄言は……書こうと思えばいくらでもひり出せるし、仮に浮かび上がるすべてを書いたところで、冗長すぎて多少読まれなくなる程度の差でしかない。

 やろうと思えば、自分の今日一日の作業を分単位でまとめることが出来るし、そうなれば、自分が苦手とする数万文字、それ以上の文字数をコンスタントに書くのもそうは難しくないだろう。生み出された文字列の価値が限りなく薄いだけの話だ。


 けれども、本来であれば一定の文字数に収めるべきではある。

 作者の仕事の一つとして読者に興味・印象・感動を与えるためにトピックを選ぶという作業がある。エッセイを書くにしても「トイレにどんな香りの芳香剤を使っているのか」や「食品を買うたびにアセスルファムKが含まれているかを確認する癖がある」なんて情報は不要である。

 そんなものを延々聞かされようが退屈だろうし、作品の指向性が失われてしまう。この作品はどこから始まって、どこへ向かうつもりなのかが見えてこない。


 制約は大切だ。カクヨムでいえば、タイトルなり一言コメント・あらすじなり、選択ジャンル、タグなりというのは、それ自体が一つの制約となる。

 実質無限大の状態から、何とか自分の掌に落とし込めるだけのサイズとするために、ひたすらに削いでいく。小さくなればなるだけ、全体を俯瞰し、加工するためのエネルギーを減らすことが出来る。その作業自体が作品をまとめる為の原動力にもなる。



 ある著名な漫画家は、自分の作品がいつ打ち切りになってもいいように、用意される話数に応じて、何パターンかのストーリーラインを考えていたらしい。

 小説においても、それは考えておくべきなんだろうとは思う。「いつ、何文字で終わりにするつもりなのか」。Web媒体では自由なペースで連載・完結が出来るわけだが、そのペースの終わりに自分や読者が続いているかは分からない。

 

 この作品はもう少しで目標の10万文字に到達する。

 もはやエピローグに入っているようなもので、盛り上げどころも何もない。まあ、次回に似たようなことをするのであれば、ちゃんとピークとかクライマックスとか作るように心がけようかと思った。

 創作論に盛り上がりの概念があるのかは分からないが、一番伝えたいこと、熱意を持っているトピックをいくつかに分散して配置してみて、その前回・前々回あたりから、ちょっとシリアスな感じにしてみるというのはどうだろう。

 クリフハンガー(作為的な「引き」)というやつだ。エタってしまうピンチを迎えてみたり、いよいよ結果発表だ……と次回に引き延ばしてみたり、プライベートで何か大変なことが巻き起こったりだ。


 この手法を使うには、書く前に全容をある程度は把握していなければならないという大きな課題はあるのだが……

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