過ぎ去ってしまった時について


 妄想をしている間にも、執筆をしている間にも、その他の行動をしたにせよ、しなかったにせよ、時は過ぎ去っていく。

 幸か不幸か不老不死ではないので「手遅れ」という概念が常にまとわりついてくる。この時代はとにかく比較対象がどこからでも映り込んでくる。エモさや尊さと陣形を組んだ上で、こちらの感情を壊してやろうという目論見だ。

 その中で救いのない現状から突然引っ張り上げてくれるストーリーに自己を投影してみたり、救いのない現状をもたらしているであろう悪役達が無様に落ちぶれていくサマをみて笑ってやる。

 あるいはご都合主義だなり、所詮は運ゲーだなり、俺とあのキャラクターは違うんだなり、思い切り否定してやってもいい。


 そんなことをしている間にも時は過ぎ去っていく。


「手遅れ」になってバッドエンドなり、ゲームオーバーになるならまだしも、この人生においてはキャラクター数が膨大すぎて、いちいちシナリオとかフラグとかを落とし込む暇がなかったらしい。

 そういうわけで何も教えてくれることなく、話は続いていく。


 どんな物語であろうが……それが楽しいものでも、悲しいものでも、キャラクターがどう変化しようとも、最後の一言が「俺達の戦いはこれからだ」であろうとも、それが完結済みであるのなら、一旦「終わり」として区切りはついている。


 対して自分達は終わらない。終わらせることが出来ない。

 作中のキャラクターと同じように、変化しているのか、成長しているのか、幸せになれるのか、希望を持てるのか、そんなことすら教えてくれずに、話は進んでいく。


 どぎまぎする。ぽかーんとする。椅子にもたれつつ、口をだらしなく開ける。


 そんなことをしている間にも、時は容赦なく過ぎ去っていく。

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