完全栄養書
少し前だったか「完全栄養食」という概念が、流行していた。
個人的な認識でいくと「カロリーメイトの強化版、これさえあれば他には何も要らない」というものだ。飲み物であったり、パンであったり、その形状は様々あった。
初めて見た時は「遂に来たか……」という気持ちでいっぱいだった。値段は当然張るのだが、栄養に関してあれこれ何も考える必要がないと思えば、そんなに悪くない買い物では? とも思った。
よくよく考えてみると、「栄養が充足している=健康であり続けられる」とは限らない(怪我や感染症といった外的要因もあるし、どういった成分が人体に影響を与えるのかが不特定のため)のだが、頭の軽かった自分はウキウキしていた。
例えばある一つの作品で全てのジャンル(アクション、恋愛、ホラー、SF、コメディ、現代ドラマ、時代劇、その他etc...)をまかなえたり、感情(喜怒哀楽を始め、尊い、萌え、燃え、驚き、恐怖など)をまかなえたりするものとか。
実現しようと思えば短篇の詰め合わせになるのだろうが、そうではなく、それらをすべてない混ぜにしたようなひとつの作品ということだ。
それを摂取したときに読者が何を感じるのかを知りたい。
ドリンクバーにある全ての飲み物を混ぜたときにどんな味になるのかを調べるようなものだ。そんなだから頭が軽いと言われるのだ。
テンプレ「要素」と呼ばれるだけあって、やはり各ジャンル、各感情を抱かせる文章にも「成分」があるのだろう。
「成分」があるということは混ぜられるということであり、味がどんなになるかは別として、完全栄養書そのものは存在しているのだろう。
AIが発展して、ハムレットあたりを教材データなしで作文出来るようになったら、解明されていくのかもしれない。まあ、その生成された文章――完全栄養書の価値をどれだけ重んじられるかは、その時代の人達にかかっているのだが。
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