やらなくては



 前回に引き続いて「映画を早送りで観る人たち」について。

 読み進めてみて分かったけれども、タイトルの背景には、多種多様なコンテンツが同時並行で進んでいる現状があり、友人、知り合いと話題を合わせる為にどうしても大量の情報を咀嚼しなければならない、という現状があるらしい。


 昔のような、特定のコンテンツが一強支配し、良くも悪くもそのコンテンツが合う合わないで全てが決まっていた時代から、群雄割拠、多様性の時代がやってきたわけである。

「みんな違って、みんな良い」「ナンバーワンにならなくてもいい、元々特別なオンリーワン」という世界観に近づいたワケだが……それはそれで難儀だったというわけだ。


 なぜか。それを断る権利が(実質的に)ないからだ。何であれ「その味」を受け入れなければならない。否定すると、大勢から攻撃されてしまうかもしれない。「いいね」と答えざるをえない土壌が出来上がっている。

 そんなこんなでどんどんノルマが増えていく。一ヶ月で二冊の小説を読むならまだしも、同じ時間で二十冊の小説を読み、しかもその内容を「把握して」相手と対話する必要がある。もはや苦痛だろう。

 身の回りにいる人達でなく、SNS、各種サイトのコメント欄との繋がりもある。どこからやって来るか分からない。

 何はともあれ、やらなくてはならない・・・・・・・・・・

 結果として、有識者がまとめてくれた情報を手当たり次第に見て「75点の回答」をインスタントに生成する方式をとらざるをえなくなる。


 以前の時代とどちらが良かったのか、それは問わない。

 一つの大部屋にみんなが詰まっていた時代から、人数や部屋の大きさは変わらないまま、壁がしかれ、一人一人が小部屋の中に閉じ込められているような時代になった。

 どちらが息苦しく感じるかは人それぞれでしかない。恩恵を受けている人もあれば、不便と思う人もいるだろう。


 過去に作った「あの星々に願いを」という作品。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054891045941


 コスパを求め、評価を求め、結果的に折れた経緯をまとめたものだが、あの時に感じていた強迫観念は、実は他の方も抱いていたのかと、内心安堵していたのは悪い事だろうか。


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