知識の取り込み方


 書店に立ち寄った際に「話題の新書コーナー」とやらに何冊か本が置いてあって、その中の「映画を早送りで観る人たち」という本が目に入った。

 ファスト映画・ネタバレ・コンテンツ消費の現在形……

 なんというキラーワードのオンパレードだろう。「これを読んだら痛い目を見る」と思ったので、それを一冊手に取ってレジへと向かった。


 帰ってみて、読んでみて、予想通りに突き刺さったわけだが、特段そういった見方を「悪い」と述べているわけではないのが印象的だった。

 過去の自分がどっぷりハマっていたし、今の自分だってそうした面はある。手早く本質だけを知りたいという欲求は絶えず湧き続けると思う。


 確かに時短・効率化・大量把握の文化が生まれ、それに伴いある特定の作品が占める影響力は弱まったと自分でも思う。

 世界中の、古今東西の、各業界の、超一流の人達が長年かけて作ったものに、スマホ一つでタダ同然でアクセス出来るような時代だ。その歴史のうち、果たしてただの一つがどれだけの影響力を持つというのだろう。

 行儀の悪いバイキングの客みたいな、手当たり次第にコンテンツの「美味しい部分」だけ食って、後はポイするようなそういった贅沢な……というか粗末な見方が出来るのもその性質があってのことだ。


 いや、むしろ、そんな時代であるからこそ、悩んだモノに関しては全力で時間を注ごうと思った。

「そのため」にであれば、良いんじゃないかと思う。本当に大切なものに十分なリソースを割くための時短であるのならば。

 その大切なものをより深く、強く把握するために、名著達からお知恵を拝借するような使い方であるのならば……


 まあ、そうした感想が出てくるのも、半ば手当たり次第に読んでいるからであり、結局は自分もあまり良い客ではないだろうとは思っている。

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