準備不足



「自分のことは自分が一番よく知っている」なんてことはなかなか珍しい話であり、大抵の場合、自分のことを過度に名優、または大根役者だと思ってしまう。

 前者も後者も放っておけば大切な機会を失うことになる……然るべき準備をしないから。

 自称名優はぶっつけ本番、アドリブで巻き返すなんて意気込むけれども、ボロボロにされる。間抜けな話だ。アドリブの難しさ故に他の役者は揃って台本通りに動いているではないか。勝手気儘にやって良いわけないだろう。

 アドリブを頻繁にする役者もいるだろうし、当たれば印象が強く残るかもしれない。だが、そういった役者がいたとして、自分に割り当てられた台詞を暗記していないと思うだろうか。


 物事に失敗があったとすると、そのほとんどの原因が準備不足である。孫子曰く「勝負は始まる前に既に決している」という。準備や戦略を十全に施した上で事に望めば、戦いのうちは勝ち筋をなぞるばかり・・・・・・ということだ。

 準備にも小規模(短期間)のものと大規模(長期間)というものがあり、なるべく先の未来を見通して計画を立てたいものだが、高い分析能力や、多くの経験がいるだろう。計画倒れになっても仕方ないし、それで再びアドリブに戻ってしまってはより悪いことになる。

 一日分……いや、半日分だけで良い。そのときが来るまでに自分を準備することだ。

 そして勝ち筋の上に自分がいるという感覚を与える。準備することの価値を体に浸透させていく。


 千里の道も一歩から。

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