求心力


 求心力……他人を引きつけ、その人を中心にやっていこうとさせる力


 引力、魅力と言い換えても良いかもしれない。優れたリーダーに必要な能力であることはいうまでもない。

 ここでのリーダーはLeader(指導者)でもあり、Reader(読者)でもある。

 優れた読者とは何だろう。別にレビューや評価の件数が示すわけではない。作者に感謝の気持ちを伝えたり、「このようにすべき」とアドバイスすることが指標になるわけでもない。

 回りを漂う様々な媒体で出来た文章達。それらはピンからキリまであるが、その内の上等の文章を自分に引き寄せる能力のことだ。「本に好かれる」という表現は少しクサいか。

 評価を見ることもなく、何気なく手に取った本が全部後世の名作なんて状態になったら、優れた読者どころか、むしろそれで商売の一つでも始めた方がいいかもしれない。

 実際にはそんなに高い先見性を持つ必要などない。大体、人によって好みが分かれるのが当たり前であり、世間的に芳しくない評価の本であっても、自分にとってはしっくりくるというケースは多い。個人レベルであれば求心力を上げることはそう難しい話ではない。

 自分のお気に入りの本を一冊選び、その内容を……特に優れていると思う箇所を……文章や展開、雰囲気を抜き出してみる。引っ張り出せたら、もう一冊選んでみて、同じことをする。二冊の間で共通するものはないだろうか。それが「中心」である。何冊も重ねていけば、より鮮明に中心が浮かび上がってくる。

 中心をはっきりさせておくと、その要素を含んだ本が目に入るようになる。中心の内容は人に受け入れがたいものかもしれない。だけれど、それを意識するかしないかでは、「自分好み」というか「印象に残る」本に出会う確率が随分違う。

 大層なことが書いてあっても、正確な理論に基づいたものであっても、自分に馴染まなければ意味がない。すぐに忘れてしまうだろう。


 求心力は「心を求める力」と書く。

 まずは評価や規模を置いておき、自分の心の好みというものに素直になるべきかもしれない。

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