ひねり出す


 少年漫画の初期にある事柄として「この技は消耗が激しいため、一日に◯回しか使えない」という制約がある。

 大体、最終的には(成長したのもあって)バカスカ使うことになる訳だが、実世界ではそう上手くはいかないなと実感する。

 ある程度の期間活動をしてきたが「小説執筆は消耗が激しいため、一日に三話までしか作れない」という前提は覆らない。三話目のこの話なんて、精一杯ひねり出した結果なのだ。限界を突破するには、毎日三話を書き慣れる他ないのだが、アイデアも時間的余裕もない状態である。

 ひねり出すには突拍子のないことを考えるのが手っ取り早い。脳裏に浮かんだものをひたすら書き出す。


「しゃっくりって横隔膜が痙攣することで起こるみたいだけど、実際にどう動いているのか、横隔膜を見てみたい」

「スケジュールとか約束とか習慣とか、そういう文字の集合体的なものもキャラクター化してしまえば、守ってあげたくなったりしないだろうか」

「刃物とか銃器ばかりが主人公の武器だけど、何も知らない一般人が武器選ぶならハンマーとかの鈍器の方が断然扱いやすくて効果的じゃないか」

「仮に自分が魔法を扱えるようになったとしても、暴発が怖くて使いたくない。それとも自動車みたいに扱い慣れるものなのだろうか」


……どれもこれも二話以上続けたくないトピックである。横隔膜から人体の神秘が、文字の集合体から意外な感動が、ハンマーや魔法から得物について考察の余地があるのかもしれないが、長々続けて感想が「面白かった」だけでは批判は免れない。

 ひねり出したものは、大抵が低品質である。無理があったり、興味がなかったりと、そもそも土台もろくに作らないまま、屋根だけ一端の建物みたいにしているだけだから。

 たが、ひねるにあたって、普段考えることのない組み合わせが突然ピックアップされ、合体事故の末に一線級のアイデアに達するかもしれない。


 嘘も百回言えば真実になる。

 駄文も百回書けば名文になる……?

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