答えだけの世界


 今のこの世界において「答え」を見つけることはさほど難しいことではない。金持ちになる方法、友達や恋人を作る方法、自分のやりたいことを見つける方法、心身ともに健康でいられる方法……概ね一般人が欲しがるものなら何でも揃っている。

 これは冗談ではなくて本当のことだ。むしろ、選ぶのに悩むくらいに溢れている。

 信憑性だってその道のプロが見つけた結論を簡単に買ったり、本人から聞くことが出来るのだから、担保されていると言っても良い。


 ならばなぜ、それを実行して満ち足りた表情を浮かべる人が少ないのだろうか。

 情報格差? あるかもしれない。

 胡散臭い? それもあるかもしれない。

 だが、何よりも根本的な原因として、「答え」に対する「問い」が圧倒的に少なすぎることが挙げられる。魔法のランプはあるが、願いがない状態なのだ。

 過程は最悪すっ飛ばしてもいいだろう。突然湧いてきたお金や恋人や地位に困惑するかもしれないが、それ自体はその人にとって悪いようにはならないだろうから。

 けれども問いは必須のはずだ。それが、既に満ち足りているのか、それとも聞き方が分からないのか、ぼーっとしている。そして後になってやきもきするのだ。


 こんな話を出した契機は、自分自身が呆れるほどに繰り返した行動で、そろそろ問いを見つけなくてはいけないなあ、と思ったからだ。早い話が愚痴である。

 問いは解せないことがなければ発生しないので、解せない場所に赴けば自然に発生するだろう。腐敗臭を放ち始めた習慣からの脱却。これしかない。

 しかし、新しい習慣と言われても、何をするのがオススメなのだろう。なるべく早いうちから成果が出てくるものがいいのだが。


 けれども悩む必要はない。この手には今、魔法のランプが握られているのだから……

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