陰キャラ


 もはや創作の話とは呼べない話だが、浮かんできたので書くことにする。


 陰キャラ。「根暗」「引っ込み思案」「内向的」「内気」「ネガティブ」といった雰囲気や性格が「負」な人物を指すらしい。

 少なくとも社交の場(学校生活の時が顕著だろうが)では、不利に働く性質なのだろうと思う。


 俺は自分を陰キャラだと思っているが、なぜそう思っているのかが分からない。

 自分の中に厳密な基準があるわけでもなく、周りの人に言われたわけでもない。ストレスを溜め込んだり、発散したりするのは誰もが経験することだし……

 他者との交流が少ないから陰キャラなのだろうか。人見知りで内向的な性格があるからか。その判断基準でいくと、陰キャラの数は相当多くなるはずだ。

 待てよ、無意識のうちに「陽キャラでない人は全員陰キャラである」と勝手に決めつけてはいないか。外交的か内向的かと言われれば内向的だが、どれくらい内向的かという観点で考えてこなかった。

 俺は軽度の陰キャラということなのだろうか。まあ、人見知りと同じく、この性格を自称している人の約七割(体感)はそこまで暗くないのであるが。

 自嘲の文句としては悪くないのだ。自分のことを高飛車だとか、自己中心的だという人物はあまりいないが、人見知りといい、「人よりも控えめな性質」というのは謙遜として使えるということだろう。だから、その逆は言われるとムカつく。「あなたは積極的に人を傷つけにいってますよ~」と言っているようなものだから。


 陰キャラの描写として陰口がある。見えないところでの嫌がらせ、卑怯なやり口と読み替えてもいいが、内向的な分、ストレスの発散のしかたが限られてくる。自分に向けるか、見えない誰かに向けるか。目前の相手と喧嘩しない代わりに、無防備な誰かを殴りつけることで解消する。鬱積が溜まっているほどに、暴力の度合いは上限なしに強まっていく。

 これが陰キャラが嫌われる(イメージを持たれる)理由な訳だが、まあ、七割(体感)は風評被害である。人と関わりを持たずとも、楽しく生きようと試みるタイプもいるだろう。そうでなくとも、臆病さゆえに他者を傷つけることには人一倍敏感(そのせいで上手く交流が取れないのもある)なのだ。ただでさえ知り合いが少ないのに、その繋がりまで断ち切ってしまうようなことはしない。


 話をまとめると、陰キャラというのは、現代における謙遜の一つであり、昔ならいざ知らず、趣味や嗜好が多様化し、堂々と打ち明けることも少なくないこの時代においては、「マイノリティ界のポピュラー枠」にはまっている状態だ。

 なぜそう思っているかという冒頭の質問については、おそらくであるが、自分の性格を示すときに都合が良いのだろう。「私の性格は普通です(特筆すべき点は何もありません)」とは言えないので、陰キャラと説明しておく。名刺の代わりというわけだ。

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