同じタイトル


 とある連載小説があったとして、100話のうちに全く同名のタイトルが複数あったらどんな感想を抱くだろう。

 それらの内容は異なるものとして、読者は煩わしさを感じるのか、それとも驚きを感じるだろうか。デジャブ……ほんのちょっとした違和感程度なのだろうか。

 これは以前取り上げた使い回しの亜種である。中身が違うのだから、うっかりでもなければ、同じタイトルを敢えてつけたことになる。

 まあタイトルにそこまで深い洞察を行うのはなかなかに珍しいことであるが。


 同じタイトル。運命とか告白とか遺書とか、短くて強いインパクトを持つ文字は、色々な作者が用いることになり、○○氏の「告白」とか、△△氏の「懺悔」と呼ばれることになる。

 長い(文章のような)タイトルはその点、偶然被ることは基本的にないはずだ。


……やっていることは似たり寄ったり?


 この世にいったいどれだけの勧善懲悪モノが鎮座されていると思っているのか。

 同じタイトルでも、同じモチーフでも、同じコンテンツでも。

 愛されるものは愛される。否、愛することを半ば強いられている。なぜなら悪が蔓延するのは釈然としないし、天才を上回る努力家、はたまた努力を上回る才能は人をたちまちに高ぶらせるのだから。


 閑話休題。作品内で同名タイトルを複数つけるのは、強いコントラストを与えたいときに使うのがいいかもしれない。

 例えば、物語序盤と終盤において「誕生」というタイトルをつける。

 序盤においては主人公という希望の誕生を書き、終盤においては封印が解けた巨悪の誕生を書く。同じ意味合いでもポジティブにもネガティブにも受け取れるのだ。

「安らぎ」といった言葉もそう。日常生活における安らぎと、悶絶するような展開の末の安らぎでは、その指す方向はまるで異なるものとなる。


 エッセイのような個人の感覚に依存する話に付けてみるのもいい。その人が人生で何かの体験をする度に筆者の主軸も変わっていくので、結果、同じタイトルでもその人の生きてきた痕跡が見えてくることだろう。

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