二度寝の言い訳
睡魔の強さには自信がある。
何を言っているのか分からないだろうが、自分の睡魔は本当に強い。
仕事で時間を無駄に出来ないときでさえ、二度寝させるためにあらゆる手を使う。
最近は専ら職場が舞台になっている。夢が記憶を基にしているのは本当のようだ。見ているものは、仕事で無理難題を振られて締切りにあくせくする夢、職場の同僚と揉め争う夢、顧客に呆れられて島流しに遭う夢……
上手くいくことより、いかないことの方がよほど多い。締切りが近くなるにつれて描写も過激になる。
いつも通り作業を言い渡すと、見覚えもない新入社員(?)が突然机を叩き、椅子を蹴飛ばして、
「やってらんねえよ!」
と大騒ぎする。すると、フロア内の人々は「あんたのせいだ」
「あんたのせいだ」
「あんたのせいだ」
と口々に罵り始める。体がビリビリし、ただでさえ寝不足ぎみでイライラしていたからか、カバンの中に入っていたダンベルを貸与されたノートPCに叩きつけて……
他にもジグソーパズルが1ピースなくなったとかで、職場中を探し回ったこともある。意味が分からないが、夢の中では説得力(強制力?)があるためか、何の疑問もなく怒号が渦巻くなかピースを探し回るのだ。
母を人質に取られたこともある。いつも通り出勤すると母がスーツ姿で自分の席に座っている。声をかけただけなのに、仕事がなんだの人生がなんだのとまったく柄でもない説教が始まる。
しかし、母なのである。頭の中がぐちゃぐちゃになり、起きても要領を得ず、結局ぼんやりしたまま寝てしまう。
大概がろくでもない夢である。頭の中に不安が残って職場に出向きたくなくなるのだ。
それでも遅刻一歩手前の時間になったら、無理矢理にでも体を動かすことになるし、そうすると脳裏にある不安やもやもやは影も形もなくなってしまう。
してやられて、通勤している間は言い訳を考えている。寝ても良かった理由、時間を浪費したかった理由、リスクを背負い込む理由、わざわざ状況を悪化させておいて、それでも平然としている理由。
自分でもはっきりと説明できない。悪夢、それも妙に生々しいものでは現実逃避も出来ないではないか。自ら現実も空想も悪化させてどうする。
急かす自分の姿を客観的に見つめるもう一人の自分。目的の駅についたので今回は終わりになる。
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