復讐、因果応報


 復讐は古今東西を問わず広く利用されているモチーフである。

 復讐を主体とした復讐劇、復讐譚の類いはもちろん、推理小説の動機に復讐がないものを見つける方が難しいし、戦闘(ここでは肉体的な衝突のみならず、交渉、心理戦などの知的な衝突も含んでいる)要素がある作品なら、宿敵への復讐を望むキャラクターは敵味方を問わず登場する。

 現実世界においても復讐エピソードは一定の需要がある。学校、仕事、恋愛、家族。様々な状況における悪事と報復。その一部始終を語り終わる頃には、「よくやった」と同情か尊敬されるか、あるいは困惑されるのか、ともかく相手に強い印象を与えることになる。

 復讐は……自分が当事者でない限りは、優れたエンタメをもたらすものだ。


 悪者により酷い目に遭わされた人物が、痛烈な仕返しを行う……この文面だけで読者は様々なことを期待するだろう。

 書く側にとっても利点になる。人間失格級の極悪人を登場させても無理がないし、むしろカタルシスを得るために、悪行の限りを尽くしてもらった方が良い。主人公には「仕返し」という大義名分があるので、少々やり過ぎても咎められるリスクは小さい。

 悪者と対面するところは大体は盛り上がりが約束されているし……かなり完成された作品構成と言えるだろう。


 復讐モノの課題点としては「落としどころ」にあるのだろう。救いようの悪をぶっ飛ばすこと自体は爽快ではあるが、復讐を行った自分自身が、今度は誰かの復讐相手になる……つまり「悪を以て悪を滅ぼす」ことが許されるのかどうかという点。

 ここで納得できる描写が出来るが、作者の腕の見せ所と呼べるだろう。

「みんなが悪と判断しているから?」

「善悪とか関係なく自分の意志が重要だから?」

「やらなきゃやられるから?」


 まあ、よくありがちなのは「相手の方から向かってきたので、不可抗力で仕留めてしまいました」なのだが、意志が弱い復讐劇というのもなあ……

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