モンスターについて


 モンスター。

 すっかりポピュラーな存在になった言葉ではあるが、RPGやファンタジー作品におけるモンスターの扱いについては、少々気になる点がある。

 モンスターとは和訳すると「怪物」「魔物」である。自分なりにそれらを解釈すると「人間にとっての脅威となる存在」という形になるのだが、広く用いられすぎたせいなのか、その世界における野生動物・植物に該当する存在に対しても「モンスター」のラベルが張られているような気がする。

 それって、モンスターというより「アニマル」と呼ぶべきなのではないか? と思ったりする。まあ、異世界の動物に対して「アニマル」と呼ぶのは締まらないところもあるのだろうが……

 友好的なモンスターはモンスターなのだろうか。弱いモンスターはモンスターなのだろうか。なんかこう得体の知れない感じがすれば、モンスターなのだろうか。理知的な存在はどうなのか。理知的に・・・・人間にとって害をなせばモンスターなのだろうか。

 モンスターの花形役者としての「ドラゴン」。これについても、世界に住む動物としてのドラゴンなのか、魔王のしもべとして作られた害ある存在のドラゴンによってもラベルが変わってくるのだろうか。

 とは言え、作品中におけるモンスターの表現は難しいだろうなあ。見た目や強さ(武器)を書くのは簡単だろうが、専ら主人公たちに立ちはだかる(そして突破される)障害として登場することになる彼らのことだ。それ以上の内面描写、生態描写まで書くのは割に合わない。

 大体人間と同じ理性や精神なんて持っているものがごく少数だし、擬人化しているならともかく、そのままの姿かたちで「何を考えて」人を襲っているのかの考察というのは、よほど暇でなければやらない。それより優先度の高い事象は物語上で山ほどあるからだ。

 モンスターというくくりに入った時点で、既にキャラクター性をほぼすべて捨て去っていると言えよう。その役割は「か弱き市民を蹂躙する存在(そしてそんな市民もまた、キャラクター性などない舞台装置である)」「倒されるべき存在」程度にしか残されていない。


 どちらかというとしっくり来る使われ方をしているのは、モンスタークレーマーとかモンスターペアレントと言った、人間に対して用いる「モンスター」なのかもしれない。要するに「理解の外にいる存在」だということ。

 図抜けた才能を持つ人物に対しても「怪物」という評し方をしているので、モンスターという言葉は「害悪さ」というより「理解が及ばない」ことを強調するものなのだろうか。


 ちなみに、俺にとって最も身近にある「モンスター」はエナジードリンクである。

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