諦める権利


 諦めるというと、悪い意味がどうしても先行してしまうのだが、諦めるというのは一種の権利である。

 諦めない、諦められないというのは、主人公たちが口々に言う言葉であり、敵側が諦めることを提案する。よって、諦めることが悪で、諦めないことが美徳であるように見える。

 しかし「諦めない」というのは、一種の呪いとしての側面も持つ。どんな不利益が降りかかろうとも、自分がいかに歪もうとも進み続けてしまう。自分を燃焼させながら、場合によっては周りの人までをも巻き込んで広がる渦――これが実態である。


 諦めるのが悪く見えるのは「楽な選択肢だから」というのもある。ある人は楽な道を進み、ある人は険しい道を進む。両者の姿を見て、憧れたり、心惹かれるのは後者であろう。それは「強いもの」に注目する動物的な反応なのかもしれない。

 楽な道に進む人を拒絶したくなるのは、楽な道を選んで苦労する羽目になった経験談があるから(つまりは老婆心)か、それとも自分より手際よく進めることへの嫉妬なのだろうか。


 冒頭で話した通り、諦めることは権利である。正確に言えば権利を放棄する権利であろうか。自分にそぐわない道であったときに、それを捨てて、別の道へと進むことを選ぶことが出来る。あって悪い話ではないだろう。


 拾う権利あれば、捨てる権利あり。

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