株を下げない
フィクション作品を作ろうとして、重要な立ち位置にあるキャラクターを動かすとなったときに、一番気にするのは「株を下げない」行いが出来るかどうかである。
これが雑魚敵だったり、名もない有象無象ならいいかもしれないが、自分の熱を入れたキャラクターには思い入れが出てしまう。出来ることなら自分が愛するのと同じように、他の人からも好かれてほしいのだ。
別に欠点のない完璧超人にしたいという訳でも、見せ場をたくさん用意しようというわけでもない。むしろ、作者の意図(糸)が丸見えのキャラクターは興ざめするものだ。
大切なのは「このキャラクターらしい行動か」という一点に絞られる。簡単に書いたが、実際にやるのは難しい。
ひとつ例を挙げるなら「悪役が改心するイベント」の是非だろう。これには賛否が分かれる。「悪は悪のまま突き抜けてほしい」「(ここまでやっておいて)いきなり改心するのか」などという意見もあれば、「こいつにも人間味があった」「(改心させられるほどに)主人公が強くなった」と見ることもできるだろう。
先述の展開が受容されるか、拒絶されるかも、キャラクターの行動に矛盾やブレがないかによって決まる。極悪人なら救われない結末を与えるべきかもしれない、悪に染まり切っていないのなら、より強い善を持った主人公が救う手もあるし、自分の行いに疑いがあるのなら、様々な光景を見せたうえで、悪役本人が心を入れ替えてもいい。
重要な立ち位置のキャラクター同士が戦うとなると、負ける側が何らかの落ち度を見せなければ一向に勝負が終わらない。(すべての展開が作者によって作られているのだから当たり前か)
どちらかの株を意図的に下げなくてはならない。説得力を持たせたまま(納得のできる)株を下げるというのは、同じだけ株を上げることより何倍も難しい。信頼を失うより得る方が難しいのと同じだ。
どちらも下げたくない……となったときによく用いる手が「人質」である。つまり、別の第三者の株を下げることで、お互いの株を維持する。そしてその第三者においても、子供だったり病人だったり、そうなってもやむを得ない人物を割り当てるわけだ。
人質を取るキャラクターなんて大体外道じゃないかという話もあるが、別にその悪役本人が取る必要もないし、なんだったらひょっこりと迷い込ませてもいいわけだ。人質を使うこともなく、「意図せず放たれた攻撃から庇う」という形で負けることが出来る。
キャラクターらしさを重んじるあまり、ストーリーの「らしさ」まで捻じ曲げないように注意しよう。
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