切り札を取っておく


 とても良いアイデアが出てきたとき、それを即座に切ってしまうと、非常に勿体ないと感じることがある。

 だから「取っておく」という選択をするのだが、時間の結果とともに薄れていってしまって、元々はどんな発想だったかも忘れてしまう。こうなると、せっかくの優れたアイデアも台無しだ。

 メモを取るにしたって、正確に当時の情報を書き残せるわけもない。のちに見返してみるのだが、情報は山積していくし、更新だって山ほどかかる。その中には「他の」とても良いアイデアも含まれていて、優先度を考えるのも一苦労である。

 使わなければ意味がない。けれども気軽に使うのは勿体ない。RPGの希少アイテムの扱いのような状態だ。無限増殖バグによって、大量に作ることが出来るのであれば、湯水のように使えばいい。それが出来ないから問題なのだ。

 やっぱり、出てきたときに少し時間をかけてでも、きっちりとカタを付けるべきなのだろう。最初から最後まで全て作ってしまって、残りは出すだけにする。そうすれば後腐れなくアイデアを脳の最前線から退避させられる。

 この状態で別のアイデアがやってくると、決して高くはないが、アイデア同士が融合するときがある。より研ぎ澄まされ、自分の求めていた形になっていく。最新の情報で書き直していく。複数のアイデアが練り込まれた文章。中身が増強されていくのを感じる。

 この瞬間が、創作の魅力の一つかもしれない。

 

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