ダイスを振るかの如く


 今日のダイスの合計は7だった。

 今までに10回と少しは振ってきたが、10~12が大半で、極端な値、3や18は出てきてはこない。

 実行回数がまだ少ないのだろう。この作品が一周年を迎えるころには一回くらいは出てくれるかもしれない。



 運に関する話をしよう。

「運も実力のうち」というスローガンについて、負け犬の遠吠えか、それとも勝者の謙遜だろうと思っていたのだが、最近その認識が改まってきた。

 毎日のようにダイスを振る。出た目に従って文章を書いて投稿する。力作だと思う時もあれば、こんなものかと思う時もある。手間がかかったものも、あっさり終わったものもある。

 されども、PVは0であった。ということは、良し悪しも熱意も関係なく、ただ見られてすらいないということ。

 投稿した時間がダメだったのか、タイトルが地味なのかは分からない。けれども流れていったことだけが、結果として残ったわけだ。


 ここに「悪者」もいなければ「被害者」もいない。

 これは要するにタネも仕掛けもない状態で、3個のダイスで 1のゾロ目を狙おうとし、失敗しただけの話だ。

 タネを作ろうという気持ちも、仕掛けを学ぼうという気持ちもなく、それでもゾロ目を出したいのなら、ただ単に振り続けるしかないのだろう。

 わずか数秒から数十秒で消えてしまうであろう告知の間に、そこに偶然波長の合う方がやってくる機会を祈って……



 それでもいいと思う人もいるだろう。

 確率はほぼゼロだが、ゼロそのものではない。

 別に「公開」した小説が、知らぬところでブロックされていて、他の人には全く見えなくなっていたなんて、陰謀が渦巻いているわけでもない。

 なら、まあ、気ままにサイコロを振り続けてみてもいいかもしれない。


 それじゃ困るという人もいるだろう。

 時間はたくさんあるが、無限ではない。

 悠長なことをしていたら、あっという間に後悔する結果になる。特に自分の自信のある――他の人に評価されるに値する作品が「運」によって、振るい落とされてしまうことは耐えられない。

 なら、まあ、出目を揃える手先の器用さは必要になるかもしれない。

 

「運も実力のうち」というのは、「運も試練のうち」と言い換えられるかもしれない。本来ならば、平坦であったはずの道を悪戯に長くしたり、険しくしたりする。そういう要素。

 踊らせて、コケにして、振り回す。道化姿で人を道化にする存在。


……全員が道化姿になっている新宿駅あたりを想像してみると、ファンシーであながち悪くない絵面だ。

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