締め代行業


 魅力的で高い評価を得ていた作品が、締め方のいまいちさ故に騒ぎになるというケースが少なくない。

 皮肉なことに、元の評判が高ければ高いほど、期待値と実際の落差に不満が噴出することになる。


 本来であれば、広げてから締めるまでを全て事前に算出――要するに、作品やキャラクターの動き全般を細かに考え尽くした上で、作品を書き出すべきなのだろう。

 けれどもそれには決して少なくない時間、高いモチベーション、バランス感覚、「想定された物語が受容される」という運が必要になる。

 センセーショナルな話題、発想、舞台設定というものは、早い者勝ちの側面もある。一番最初に形に出来た人に評判が集中するのは自然な話だろう。

 そうなると、形振なりふりを構う余裕もない。魅力的な展開をある程度続けることさえ出来れば、良い線までは到達する。

 キャラクター造形や世界観も固まってきて、様々なイベントや掛け合いを書き連ねていく。きっと楽しい期間なのだろうなあ。(まったく経験がないので、本当の妄言だけども)



 思うに「物語を締める専用の職人」が必要なのだ。

 魅力的な世界観、キャラクター、ストーリーを作り出せたとしても、それを綺麗に終わらせられるとは限らない。

 まずは作者が考えた着地点を聞き出し、そこに眠る矛盾や不自然な点を見抜き、直していく。締め方によっては、続編を匂わせる展開や、モヤモヤを敢えて残すといった修正をしていく。


「様々な名作のトリを飾れる」とみるか、「嫌なトコロだけを押し付けられる」とみるかはお好みで。

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