第40話 むしろ謎は深まった




「あ、あのぅ……、そ、それがゴーレムを一撃で倒す武器なの?」




 恐る恐るリンジーが聞いた。




「ああ、これは『パンツァーファウスト』って言うんだ」



「ぱ、ぱんつ……ふぁ、えっと……何?」



「……パンツじゃない! パンツァーファウスト!」




 横でアリスが吹き出した。




「面白いな。きみ達は! リンジー、これはね、発射チューブの先に着いた弾頭を撃ち出して、目標に命中させる武器なのよ!」



「へ、へぇー、そんなので、ゴーレムが倒せるんだ……」




 見た感じではとてもそんな威力があるようには見えなかった。




「この弾頭はね、成形炸薬弾せいけいさくやくだんと言って、モンロー効果を利用した……」



「……」



「……まぁ、とにかく凄まじい威力を生むのよ!」




 アリスの説明を聞いてもさっぱり分からない。只でさえこの状況を消化しきれないリンジーは、さっきからほとんど思考が停止していた。




「アリス。シュレックは?」




 カルマが聞いた。




「ああ、ここにある」




 そう言って、アリスが肩に担いだのは、筒状の長い棒で、先ほどのファウストと呼ばれるものよりも銃に近い形状だ。




「こっちの方が見た目は銃っぽいわよね。さっきのよりも威力があるんだ?」




 無邪気にリンジーが聞くと、




「ああ。命中角が九十度なら、二百三十ミリの鉄板を貫徹する力がある。パンツァーファウストも二百ミリの貫徹力があるけど、射程距離がこっちの方が圧倒的に長い。シュレックの百八十メートルに対して、ファウストは六十メートル程度だ」




 カルマが得意げに話した。




「しかし、ファウストは扱いが簡単だ。使い捨てで軽いしな。もちろんお値段も安い! いろいろ使い勝手が良いのはファウストだと思うぞ!」




 今度はアリスが口を挟んできた。

 と言っても、すでにリンジーは話をほとんど聞き流しているだけだった。




「とりあえず、両方借りていくぞ。まずは将官達の前でお披露目しなくちゃならないからな」



「いい結果を待ってるぞ!」



 

 ――次の瞬間、まるで時間が巻き戻るかのように、巨大な武器の棚は白い世界の果てへと、猛スピードで戻り、アリスもそれに引き込まれるように消えていた。



 ふと気づくと、リンジーはもともと居た司令本部の何でもない、飾り気のない一室に戻っていた。



 カルマも当然のような顔をして、目の前に立っている。




「リンジー? 大丈夫か?」



「……う、うん。だ、大丈夫、と、思う」




 未だに現実感がなく、何となく足場がふわふわしているような感覚だった。




「……さぁ、将官達のところに行くぞ。悪いがリンジーも持ってくれないか」




 カルマの手には、パンツァーファウストが握られていた。そして、肩にはパンツァーシュレックが……。



 こういうことだったのか……。

 一応、合点はいった。



 未だに信じられないけど、こういうからくりで武器を手に入れていたんだ……。



 見渡しても、アリスはここにはいない。



 あの『在庫帳』の中に住んでいるということなのか……。



 いや、在庫帳そのものだと言っていた……。



 カルマは武器をどこで仕入れているのか、ずっと気になっていたが……、むしろ謎は深まった。



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