第39話 パンツァーファウスト




「アリス。今回はゴーレムだ。クライアントは、ゴーレムの進撃を止めることができる武器をご所望だ」



「……ゴーレムと来たか……。まったく、にぎやかな世界だな」



「個体差はあるみたいだが、大きいものは数十トンはある石の塊だ」



「……重戦車なみだな」



「一撃で倒すには打撃力、貫徹力かんてつりょくが必要だ」



「……ふむ。地雷でも仕込むか……」



「悪くはないが……、待ち伏せよりも、こちらから迎撃できる武器が良いだろう」




 アリスと名乗った幼い美少女は、カルマの話が理解できるらしい。……と言うより、むしろカルマに助言する立場のようだ。



 武器庫の管理人。



 あるいは在庫帳そのもの、と言ったのは、嘘ではないみたいだ。




「……それなら、『パンツァーファウスト』で決まりだな」



「……そうだな。俺も同じことを考えていた」




 ――パンツァーファウスト?




「うーん……それと、『パンツァーシュレック』もお勧めだな。こっちの方が貫徹力は上だし、何より射程が長いところが有利だ」




 アリスは、話しながら、武器が並ぶ棚に近づいた。見上げるほどの高さがあるその棚には、びっしりと武器が並び、白一色の世界の地平へと続いている。



 アリスが棚に手を掛け、わずかに力を入れると、巨大な棚は猛スピードで横滑りを始めた。




「おっ、あった!」




 アリスが手を伸ばすと、棚がぴたりと止まった。




「うむ。ファウストにシュレック。両方とも在庫は十分にあるな。客は軍なんだろ? 何丁いるんだい? カルマ・ラングレイ?」



「まだ分からん。まずは将官達の前でお披露目だ。お気に召せば、結構な数を買ってくれると思うがな……」




 カルマが手に取ったその武器は、奇妙な形をしていた。



 棒の先っぽにひし形というか……、円錐状の頭が着いている。



 何と言うか、銃とはまったく違う形状だ。

 ハンマーの出来損ない? まさかこれでゴーレムを殴りつける訳じゃあないでしょうね……。



 こんなので、いったいどうやってゴーレムを倒すと言うのよ?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る