第6話 銃で火龍がやれるものか
「銃だって? 冗談じゃない! そんなものが何の役に立つ?」
村長が呆れて声を上げた。周りの冒険者達も失笑している。
「馬鹿にするな! 銃ならわしだって持っている。あんなもの鹿撃ちぐらいにしか使えないだろ! 後はせいぜい野犬を追い払う程度だ」
銃は便利な道具だが、あまり実用的とは言えない。
リンジーも、初めて銃を見た時は驚いたが、欲しいとは思わなかった。
火薬の力で鉛玉を撃ち出すなんて、本当に人族の知恵には驚嘆する。銃には魔力も何も関係がない。強烈な爆発音と共に撃ち出される高速の弾丸が、遠くの獣を射止めたのを見た時は、得体の知れない恐怖を感じたものだ。
しかし、扱いがとにかく面倒だった。
一発撃つのにかなりの時間が掛かるし、命中精度も悪い。狩りに使うには合理的とは言い難い。これなら弓で射たほうがはるかに早いのだ。
村長の言うとおり、せいぜい鹿狩りに使う程度ならいいが、とても火龍退治に使えるとは思えない。みんなそのことを知っているから笑ったのだ。
「ええ、一般に出回っている銃ならそうでしょうね。しかし、私が扱っている銃は全く別物ですよ。威力も精度も段違い。もちろん火龍退治にも抜群の性能を発揮するでしょう!」
妙に自信に満ちた言葉に、その場が静まりかえったが、
「そんな馬鹿な……」
「銃で火龍がやれるもんか……」
すぐに、ぼそぼそとそんな声が聞こえてきた。
「……まぁ、無理にとは言いませんがね……」
武器商人がその場の空気を悟り、早々に引き下がろうとすると、
「村長さん。カルマさんの言っていることは本当ですよ。カルマさんが売っている銃は、見たこともない強力なものばかりで、本当にすごいんですよ!」
デシアが金色の瞳を無邪気に輝かせて言った。膠着したその場の空気を一瞬で和ませる不思議な力は、その瞳にある種の魔力を帯びているようだった。
「……そんなに言うなら、一度見せてくれ。本当に火龍を退治できるほどの物なのか……買うかどうかは見てから決める」
もっともな意見だ。
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