ポポロ
※手書きなので読みづらかったらゴメンなさい。
あたしが『ポポロ』のことを知ったのは、あたしが高校二年の時だった。
友達が最近SNSでバズってるっていう、鏡の中の変な生き物っていうのを動画で見せてくれて、どうせ何かの合成だろうってあたしはそん時は思ってたんだ。
よくある天変地異の前触れだとか、あるいはUFOの動画だとか。
ちょっと、皆の好奇心をくすぐって終わり、みたいな。ただそれだけのもんだと思ってたんだ。
でも、ポポロは違った。
その動画を教えられて家に帰って、寝る前に歯を磨こうとして鏡を見たら、いたんだよ、ポポロが。
ポポロは、白くて丸っこくて、可愛らしい目が二つだけあって。
何か、ウーパールーパーみたいな見た目の生き物だったんだ。
そいつが鏡の中を泳ぐように移動してて、あたしの前を横切った。
鏡の中のあたしを、って意味だよ。
ポポロは鏡の中にしかいないんだ。
(いや、本当はちょっと違うんだけど、とりあえず、ここではそういうことで)
とにかくあたしは驚いた。
てっきりポポロは合成だと思ってたからさ。
まさか、本当にいて、こうして自分の前に現れるなんて思わなかったんだ。
本当はスマホで撮れば良かったんだろうけど、ポポロはすぐに鏡の端っこに行って消えちゃったんだ。
あたしはどうしたもんかと思ったよ。
あれは見えていいもんだったのか。もしかすると、幽霊とかなんじゃないかって。
でも、ポポロは本当にいたんだ。
あたしがポポロを見た翌日から、ポポロの目撃談が加速的に増えていって、最終的にはニュースになって、専門家まで出てきて、それで――ポポロは居るって事になったんだ。
鏡の中にだけ生息する、まったく新しい生物、ポポロ。
名前は誰がつけたのか分からないけど、可愛らしい見た目にぴったりだと思ったよ。
ポポロの研究が進んで、いろんなことが分かっていった。
ポポロは鏡だけじゃなくて、とにかく反射するものに現れるみたいってこと。要は窓ガラスとか、水面とかにも、ポポロは現れるの。
で、ポポロは向こうにしかいないけど、こっちにも干渉できるってこと。
ポポロは基本的に、空気中の霞 (ごめん、何かの番組でここ詳しくやってたけど、思い出せないや)を食べてるみたいで、向こうでポポロが口をパクパクさせて食べる仕草をしたら、こっち側の、その霞の量が減ってるんだって。
あたしたちはポポロに触れないけど、ポポロはあたしたちに触れる、ってこと。
さらに、もひとつ分かったことが、ポポロの大きさはその反射する物の大きさで変わるってこと。
どうやら、例えばポポロが鏡に映るとして、ポポロの大きさは、その鏡の大きさの5%に必ずなるんだって。
だから、大きな鏡を用意すれば、ポポロはそれだけ大きくなる。
いや、それだけじゃなくて、例えば高層ビルの窓全部を鏡と見立てて、そこにポポロが飛び込んだら、超巨大ポポロの出来上がりって、わけ。
まぁ、でもポポロはぶっちゃけ、殆ど可愛いだけの生き物で。
だから一気にブームになった。
ポポロのぬいぐるみとか、ポポロをイメージした楽曲とか。
ぬいぐるみは可愛かったから、あたしも買ったよ。
ポポロが愛される理由は色々あるけど、感情表現が豊かだったってのが、大きかったと思う。
ポポロは自分の感情を目の色で表すの。黒が普通、青が寂しい、緑が楽しいとか嬉しい、赤が怒ってる。
ポポロはたくさんいて、全国、全世界各地でポポロの目撃談が相次いだ。
というか、もう近所の野良猫レベルで見かけるくらいには、ポポロは居た。
あたしも初めて会った夜から、もう何度もポポロと遭遇してる。
もうポポロは、会えれば、その日一日はラッキーかな、くらいのものにまでなってた。
で、運命の日。
どっかの馬鹿な研究者が、馬鹿なことをしたんだ。
どうにかしてポポロを外に出せないかって考えた。ポポロは反射物から反射物に移る特性がある。
なら、ポポロが移れない環境を用意して、彼が入った鏡を壊したらどうなるのか。
鏡を粉々にすりつぶして、何も反射出来ないようにしてしまったら、ポポロはどうなるのかって。
馬鹿なことだよ。
……でも、その時は皆口を揃えてそう言ったけど、内心じゃ、気になってたんだ。そうしたら、どうなるんだろうって。
それで、ソイツは実験したんだ。
何とわざわざ宇宙にポポロを飛ばして、そこで鏡を爆破するって。
色々非難はあったけど、結局それは実行されて、いくつものテレビ局がその瞬間を伝えようと張り付いてた。
あたしもその時ニュースを見てた。
ここが超えちゃいけないラインだってのは、何となく分かってたんだけど、それでも、どうしても、気になっちゃったんだ。
結果は失敗。
鏡は無事壊れたけど、ポポロは出てこなかった。
まぁ、そりゃそうだ、って言われたら、それまでの話なんだけどね。ポポロは鏡の中だけの生き物だったんだよ。
実験を計画した博士がどうなったのか知らない。それを援助した会社も。
『ポポロは出ませんでした』っていう、明らかにトーンダウンしてる、バラエティ番組の司会者の声だけが、あたしの記憶に残ってる。
そっからはまた、変わらない日々が始まった。
ポポロが見れたらラッキー。ポポログッズの新商品発売。ポポロの生態に迫る、とか。
そんな日がずーーっと続いた、ある日。
あたしたちは、しちゃいけない事をしたんだって、今更ながらに気づかされたんだ。
渋谷の街のビルの窓一面に、やたらデカいポポロが現われたんだ。
その時、街に居た人は歓声を上げてたらしい。
まぁ、デカポポロなんて、その時の皆にとっては、ただのレアイベントみたいなもんだったんだろうね。
でも、ポポロにとっては違ったんだ。
あたしも動画でだけ見たんだけどね、そのポポロ――目が真っ赤だったんだ。
おもむろに、ビルの中のポポロが口をパクパクさせたの。
そしたら、渋谷の交差点はすぐに血の海になった。
そう――ポポロが人を喰ったんだ。
そっからはもう地獄だった。
デカポポロは一匹だけなんだけど、普通サイズのチビポポロたちの目も真っ赤になってて、そいつらに見つかると、デカポポロがすぐにやって来て、バクリ、って。デカポポロは、そこから別の反射物に移ってもサイズが変わらなかった。
だから、あいつはずっと人間を一口で食べ続けていた。
皆、鏡やら反射するものから途端に逃げ出した。
何もないコンクリートの部屋の中に逃げ込む人もいたし、山に隠れようとする人もいた。
人類は凄い勢いで減っていった。
デカポポロが現われるのは一瞬で、チビポポロは何故かすっかり数が増えて、あらゆる反射物の中にいるようになってしまった。
見つけられて殺される。
人類はただそれだけを、され続けて来た。
あたしは、あのデカポポロは、あの時宇宙で爆破されたポポロだと思ってる。
あの時のポポロがどうにか帰ってきて(誰かから聞いた話だと、宇宙を見るための巨大な望遠鏡の鏡にワープしてきたんじゃないのかって)それで、あの時された仕返しをしてるんじゃないかって。
今はもう誰も、誰とも会わない。
瞳の中にもポポロが居るってことが、どっかで立証されたから。
だからあたしは、今こうして、コンクリートで覆われた、殆ど何もない部屋の中に居る。何かを映すものはここにはもう無い。
未だにポポロが何だったのかは分からない。
でも、人類がやっちゃいけない事をしてしまったのだという事だけは、はっきりと分かってる。
※これを読む人へ。
手書きのため、字が汚くて読めなかった、もう一度ごめんなさい。
この部屋には一応ノートパソコンはあるし、出来るならそれで残した方が良いってことは分かるんだけど――、
あたしにはあのディスプレイと向き合う勇気が無いんだ。
本当にごめんなさい。
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