外伝Ⅰ 青春時代が現実なんて②
☆★☆★ 3巻 4月7日発売 ☆★☆★
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「ククク」のコミックス3巻が来月発売されます。
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筆記試験が始まった。
魔族領のあらゆるところから集まった猛者たちが、一斉に答案用紙を捲る。
1問目を見たカプソディアは驚愕した。
問1
「人間がいました。殺しますか? 殺しませんか? それとも仲間にしますか?」
「な、なんだこりゃ……」
カプソディアは顔を覆った。
軍の筆記試験だから、数学や言語学などは勿論、歴史や兵法、果ては人間に関する知識やその政治学などが出てくるのかと思い、カプソディアは数年前から備えていた。
だから、ヴォガニスが1週間前「勉強してない」と言いだした時は慌てたものだ。
これがルヴィアナやブレイゼルが言うならわかる。実際、2人も勉強せずに筆記試験に挑んでいるようだ。
しかし、2人はどっちも種族のエリート出身である。昔から帝王学を学んできたのだろう。軍学校の筆記試験など勉強などせずに通るだろう。
でも、ヴォガニスはまずい。彼は本当に頭が悪いのだ。
1足す1を、平気で「11」とかいいそうなぐらいヤバいヤツなのだ。
だからカプソディアはほぼ寝ないで勉強に付き合ったのに。
(何これ?)
出てきた1問目は、実にふわっとした問題だった。
(なんだよ、これ。この3択から選べってこと? そ、そりゃあ、〝殺す〟に決まってるんじゃない? いや、でも……魔族によっては殺さず、捕虜にして情報を引き出し、そして殺すという選択肢も……。いや、それは殺すという選択肢もなり得る? いや、待て待て。そもそもその選択肢って、仲間にするってことでは?)
迷いが迷いを生む。
カプソディアは頭を抱えた横で、横に座ったルヴィアナはサラサラと何事もなかったかように書き始めていた。
ルヴィアナだけではない。あのヴォガニスですら意気揚々と答案用紙に答えを書いている。
こっそり周囲を見ると、ほとんどの魔族が鉛筆を走らせていた。
迷っているのは、カプソディアだけだ。
(ちょっと! 嘘だろ!! このよくわからない問題になんで、そんなにスラスラと回答を書けるんだよ、こいつら)
落ち着け、と頭でわかっても、カプソディアはやるしかなかった。
ともかく鉛筆を走らせて、回答する。それが答えかどうかわからない。その迷いが文体にも現れたが、とにかく欄を埋めることにした。
ようやく1問目が終わった時には、試験時間の3分の1が過ぎていた。
(時間がない! 次――――)
問2
「当然、人間を殺したという選択肢をした思いますが、今のあなたのご心境を書いて下さい」
(第1問で殺すこと前提なのかよ!!!!!!)
カプソディアは心の中で絶叫する。
涙ながらに、第一問の答えをパンで消した。
殺すことを前提に文章を組む。すでに試験時間の半分が過ぎていた。
(飛んだロスだったぜ。てか、2問目もふわっとした問題だな。心境なんて人それぞれじゃねぇかよ。回答なんてあるのか? いや、待てよ)
そこで、カプソディアはふと思い付く。
諦めの悪さはゴ●ブリ並みの彼は、視線を下ろす。
先に問3を見た。
問3
「勿論、最高だったと答えたと思いますが、さてあなたが最高と思う人間の殺し方はなんでしょうか?」
(やっぱりな。やはりすでに答えが提示されていたか。ククク……。この俺を2度も騙そうなんてそうはいかないからな)
カプソディアは問2に「最高だった」という前提で文章を書く。
手早く、問3も片付け、遅れた分を取り返していく。
そして問4にやってきた。
問4
「ククク……。問3を見て、問2に『最高だった』と書いた愚か者め。恥を知れ。そして問2に『チョー気持ちいい』と書いた者よ。今の優越感を言葉に表すがよい」
「なんだよ、この問題ぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!」
ついに耐えきれず、カプソディアは立ち上がって絶叫した。
「貴様、うるさいぞ」と試験官にドストライクで怒られると、スゴスゴと椅子に座る。
(ふざけるな! 何が『愚か者め』だよ。『恥を知れ』だよ!! 人の心を読んでるんじゃねぇよ。誰だよ、この問題作ったヤツはよ!!)
カプソディアはブツブツ言いながら、2問目の内容を消す。
すると、試験官が鋭い目つきのまま言った。
「いいか! この試験は魔王様がお前たちのために作ったのだ。受験ができるだけ、有り難く思うんだな」
(魔王様かよ!! だったら、もっとちゃんとした問題にしてくれよ。この問題から滲み出てくるのは、陰険でいやらしい目つきをおっさんのイメージしか
沸かんぞ、俺!! あと受験ができるのは、うちのとーちゃんが受験費用を振り込んでくれたからだよ。ありがたく思うのはうちの親だ!!)
カプソディアは脳内でまだ見ぬ魔王様に対して怒り狂う。
その時、試験時間を見ると、すでに10分しかなかった。
(ぎゃあああああああああ! 時間がねぇ!!)
カプソディアはまた心の中で絶叫するのだった。
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