5

「おめ…でた……?」


 ラーファオが茫然としている間に、リーファはエレノアに支えられながらソファに腰を下ろした。


「おめでた……って、姉上?」


「子供……?」


 凍りついてしまったように動かなくなったラーファオとユアンに、ばあやははあと大きくため息をついた。


「男どもは情けないのぅ」


「りんりん、あかちゃんー?」


「おめでたー?」


「やったー!」


 妖精たちが騒ぎ出すと、ようやく我に返ったらしいラーファオが、妻のもとへ飛んで行った。


「本当なのか?」


「そ、そうなのかしら……? 言われてみれば確かに思い当たる節も……」


 リーファ本人も気づいていなかったのか、おろおろとばあやを見上げている。


 ばあやはリーファの脈を取り、顔色を見ながら「間違いない」と判断を下した。


「まだはっきりとはわからんが、まあ、妊娠して五、六週間ってところじゃろうな」


 すると、ラーファオは感極まったようにリーファを抱き上げた。


「きゃっ」


「でかしたリーファ!」


「これ! 妊婦をそんな風に抱き上げるな!」


 ばあやに注意されて、ラーファオは渋々リーファを膝の上に抱き上げて座りなおす。


「よかったな」


 心配そうにリーファの周りをうろうろしているエレノアを捕まえて、膝の上に抱き上げながらサーシャロッドが言えば、リーファは頬を染めて小さく頷いた。


「しばらくは安静にしていろ。少なくとも安定期に入るまではな」


「お、お家のことはわたしががんばります!」


 エレノアが意気込んで言うと、リーファが優しく微笑んでくれる。


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えてしばらくゆっくりさせていただきますね」


「ちょうどよく話し相手兼見張りがきたからな。ユアン皇子、リーファがうろうろしないかどうか見ていてくれ」


「あら、わたくしはそんなにうろうろしたりしないわ」


「嘘をいえ。お前は昔からじっとしておくのが苦手だろう」


「姉上、しっかり見張らせていただきますからね」


 夫と弟に二人がかりでやり込められて、リーファは少し拗ねたようだ。


 だが、おなかの中に子供がいると聞いて嬉しくて仕方がないのか、先ほどからしきりに平らなお腹を撫でている。


 ラーファオはそんな妻の頭を愛おしそうに撫でていて、エレノアはちょっぴり羨ましくなってしまったのだが――、それは、内緒だ。

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