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 月餅が出来上がったころに、ユアンとラーファオが戻って来て、そのあとでサーシャロッドもやってきた。


 月餅のほかに、ふかふかの蒸し饅頭と言うものも作って、エレノアは、はじめてみる異国のお菓子に胸が躍る。


 当り前のようにサーシャロッドに膝に抱き上げられてお菓子を食べさせてもらっていたら、ユアンが目を丸くした。


「お二人は本当に仲がいいのですね」


 エレノアはハッとした。いつもの調子で膝の上で「あーん」をしてもらっていたが、よくよく考えればここにはユアンがいる。リーファとラーファオに見られるのに慣れてしまったので気にならなかったが、ユアンに見られるのは恥ずかしい。


 エレノアは慌ててサーシャロッドの膝から降りようとしたが、しっかりと腰に腕を巻き付けられていて、逃げ出すことはできなかった。


「新婚だからな」


 サーシャロッドがさも当然のように言うので、エレノアは恥ずかしくてうつむいてしまう。


 ユアンはそう言うものなのかと頷いた。


「姉上とラーファオはやらないの?」


「す、するはずないでしょう!」


「お望みとあらばやってもいいぞ」


 リーファとラーファオが同時に答えると、リーファは真っ赤になって慌てたようにラーファオと距離を取った。


「りんりん、まっかー!」


「りんごみたーい」


 妖精たちが月餅を食べながら騒ぎ出す。


 ユアンは月餅にかじりつきながら吹き出した。


 揶揄われたのに気がついたリーファが、ユアンを睨みつける。


「姉をからかうものじゃありません!」


「そんなに怒らないでよ。ほら、あーん」


「もう、知らないわ!」


 リーファはツンとそっぽを向いたが、ユアンに一口サイズにちぎった蒸し饅頭で唇をつつかれて、仕方なく小さく口を開ける。


 だが、もぐもぐと饅頭を咀嚼していたリーファは、突然口を押えて立ち上がった。


「リーファ!?」


「姉上!?」


「りんりんー!」


 慌てたようにキッチンへと走って行って、口の中のものを吐き出してしまったリーファに、ラーファオが慌てて駆け寄る。


 妖精たちが数人、部屋から飛び出していった。


「どうした、何か――」


「だ、大丈夫。ちょっと気分が悪くなっただけだから」


 リーファの顔は真っ青だ。


 エレノアが水の入ったコップを手渡すと、リーファが礼を言って受け取る。水を口に含んで、胸の上をおさえながらゆっくりと飲み込む様子に、リーファの背中を撫でながらユアンが顔をあげた。


「ラーファオ、この世界に医者は――」


「ばあやが診れるはずだ!」


 そう言って、ラーファオがばあやを呼びに行こうとしたとき、妖精たちに連れられて、ばあやが姿を現した。


「ばあやさん!」


「落ち着きなされ」


 エレノアが半泣きになって顔をあげれば、ばあやは優しい顔をして頷き、リーファのもとへ飛んでいくと、いくつかリーファに質問して、にっこりと微笑んだ。


「よかったのぅ、ラーファオ。おめでたじゃろう」


 ぽかん、とラーファオは口を開けた。

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