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「いやいや、突然すまなかったね。まさか情事の最中だったとは」
真っ赤になってうつむくエレノアの前で、優雅にティーカップを傾けながら「あはははは」と陽気な笑い声をあげているのは、光り輝くような金髪に、赤紫色の瞳をした驚くほどの美青年だ。
今朝突然部屋に乱入してきた男を見て、サーシャロッドはうんざりした顔で彼をいったん部屋から追い出し、着替えたのちに別室で改めて向かい合っているのだが、不機嫌なサーシャロッドとは反対に、乱入者はものすごくご機嫌な様子。
(見られた、見られた……)
エレノアは先ほどから、この目の前の見ず知らずの男性に裸を見られたという事実に脳が沸騰しかかっている。
サーシャロッドはそんなエレノアを膝の上にぎゅっと抱きしめて、じろりと男を睨んだ。
「それで、何の用事だ。フレイディーベルグ」
「やだなあ、君が妻を娶ったと言うから顔を見に来ただけじゃないか。そんな怖い顔をしていないで、早く紹介してくれないかな?」
わくわくした様子でフレイディーベルグはエレノアに視線を向けた。
サーシャロッドはため息をついて、エレノアの頭を撫でながら言った。
「エレノアだ。七か月前に妻にした。――エレノア、これはフレイディーベルグと言って、太陽の宮に暮らす太陽の神だ」
エレノアはびっくりしてフレイディーベルグを見た。
彼はひらひらと手を振りながら「フレイって呼んでねー」と言っている。
「君が妻なんて驚いたけど、小動物みたいでかわいいじゃないか。首輪つけてつないで、一日中撫でまわしてみたいね」
「――!」
満面の笑顔で怖いことをいうフレイディーベルグに、エレノアは小さく悲鳴を上げてサーシャロッドにしがみつく。
ふるふると震えるエレノアを抱きしめて、サーシャロッドはじろりとフレイディーベルグを睨みつけた。
「エレノアが怯えるだろう! お前の趣味はどうでもいいが、エレノアを怖がらせるな。よそでやれ!」
「やだなぁ、冗談なのに」
冗談には聞こえなかった。
楽しそうに笑うフレイディーベルグをそーっと盗み見れば、パチンと片目をつむられる。陽気な人――いや、神なのだろうが、得体が知れない感じがして、少し怖い。
「それでさ、おなかすいたんだけど、朝ごはんはまだかな?」
当然のように朝食を要求するフレイディーベルグに、サーシャロッドのこめかみに青筋が浮いた。
しかしフレイディーベルグはどこ吹く風でニコニコと微笑んだままだ。
エレノアはそんな二人に、おろおろとすることしかできなかった。
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