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 結婚式の宴も、たけなわになってきたころだった。


 ラーファオはすっかり酔っぱらってしまったらしく、少し離れたところでリーファの膝を枕に休んでいる。


 妖精たちもすっかりできあがってしまって、あちこちでどんちゃん騒ぎをはじめていて賑やかだ。


「カップケーキ、おいしかったわ」


 エレノアはサーシャロッドのそばから離れて、泉のそばでカモミールの姫と話していた。


「よかった! 妖精さんたちも喜ぶわ」


 穏やかに微笑むカモミールの姫はとてもきれいだった。いつも賑やかな彼女がこんなにも落ち着いて見えるのは、結婚式の緊張と、それから大好きなヤマユリの王子の花嫁になれた喜びからだろうか。


 ヤマユリの王子はとても優しそうだから、きっとカモミールの姫は幸せになれるだろう。


「ここで花占いをしていたときは、まさか彼と結婚できるなんて思わなかったわ」


 花占いではいつも「きらい」で終わっていたというカモミールの姫。何度やっても「きらい」で終わるから、最後にはすっかり自信をなくして、大好きなヤマユリの王子に会いに行くことも躊躇っていたそうだ。


「サーシャ様が、占いは所詮占いだって言っていたから」


「そうね。でも、何十回もやって全部同じ結果だったから、さすがに何か運命めいたものを感じちゃったわ」


「確かに……、全部『嫌い』で終わるなんて、ちょっと変かも」


 サーシャロッドが、花びらの枚数が決まっている花以外では、花占いが「好き」で終わる確率は半分だと言っていた。残りの半分は「嫌い」で終わる。だから、すべて「嫌い」で終わるのは少し考えにくい。


「まるで誰かに意地悪されていたみたい」


 エレノアがぽつりと言えば、カモミールの姫も小さく頷く。


「そうね。わたしも誰かがわたしに意地悪しているんだって何度も思ったわ。意地悪しているのはもしかしたらヤマユリの王子で、わたしのことが嫌いだから花占いの結果を『嫌い』で終わらせているのかもって変に疑ったりしてた。それを言ったら、彼にちょっと怒られちゃったけど……。そんなことあるはずないだろうって」


 ヤマユリの王子はカモミールの姫のことが大好きだ。エレノアも、彼がそんなことをするとは思えない。


 だから、やっぱり不思議なのだ。


「でもいいわ。こうして結婚できたんだもの」


 カモミールの姫は嬉しそうに笑うと、収拾がつかなくなる前に結婚式を終わりましょうかと言って立ち上がる。


 みんな酔って大騒ぎをしているので、早く終わりにしないと、このままここで疲れて眠りこけてしまいそうだ。


 エレノアもサーシャロッドの下に戻ろうと、カモミールの姫とともに泉に背を向けたそのときだった。


「結婚なんて、認めない―――!」


 突然、あたりに大きな声が響いたかと思うと、背後で泉の水がばしゃんと音を立てて。


「きゃあああああ――――!」


 その水は、あっという間にカモミールの姫とエレノアを飲み込んでしまった――

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