結婚式は大騒動!
1
「やぁ……、だめです……! だめぇ……!」
エレノアは頼りない声をあげながら、ばたばたと湯船の中で手足をばたつかせた。
しかし、背後から絡みついている腕はまったく緩まず、むしろ暴れれば暴れるほどに絡みついてくる。
「サーシャ様、だめ……!」
湯船の中にはバラの香りのするふわふわもこもこの泡が浮かんでいて、サーシャロッドの手には体を洗うための柔らかいスポンジ状のもの――月の宮に生息している植物の実を乾燥させたものらしい――が握られていた。
「暴れたら体が洗えないだろう。おとなしくしろ」
サーシャロッドの楽しそうな声が耳朶をくすぐるが、もちろんエレノアはおとなしくすることなんてできない。
しかし、「体を隅々まで洗う」と宣言したサーシャロッドは、目的を達成するまで決してエレノアを離さないだろう。
(一緒にお風呂って言うだけでも恥ずかしいのに、むりー―――!)
泡が隠してくれるとはいえ、エレノアは当然全裸の状態だ。サーシャロッドがその手で裸に剥いて、湯船の中に放り込んだ。そして、サーシャロッドももちろん裸。真っ赤になってふるふる震えながら逃げようとするエレノアを捕まえて、スポンジを手に取り、さあどこから洗ってやろうかと、にっこりと極上の笑みを浮かべている。
(サーシャ様、いじわるです……!)
しかし、こうなったのには訳がある。
エレノアにはさっぱり理解できない理由だが、サーシャロッドにとってはエレノアの抵抗などあっさりねじ伏せて強行突破するほどに重要なことらしい。
(だからって、だからって―――!)
毎夜の「肉付きチェック」で全身を撫でまわされているエレノアであるが、それとこれとは大違いだ。
背中にぴったりとくっつくサーシャロッドの肌の感触に、すでに脳が沸騰しそうな状態なのである。
「さあエレノア、観念しろ」
背後から耳たぶにかぷりとかじりつかれて、エレノアは口から魂が抜けだしそうになった。
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