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次の日の朝、エレノアはさっそくばあやとカモミールのいる棟へ向かった。
カモミールはばあやの暮らす棟に住み込んで花嫁修業にのぞんでいるが、エレノアは毎日通うことになっている。
ばあやはエレノアも住み込みで学ぶことを希望したが、サーシャロッドが許さなかった。エレノアがばあやのもとで花嫁修業をする条件は「食事と睡眠はサーシャロッドと一緒に取る」というもので、それが守れないのであれば許可しないと言ったため、ばあやも渋々折れたようだ。
エレノアが食事と睡眠の時間以外をばあやのもとですごすと聞いて、妖精たちがぶーぶー文句を言ったが、ばあやのもとに押しかけていく勇気はないらしい。
拗ねたように口を尖らせて、早く戻って来てねと見送られた。
「だから、お茶なんて飲めば一緒じゃないの!」
エレノアがばあやの棟の扉を開けた瞬間、カモミールが叫び声とともにエレノアの目前を猛スピードで横切った。
エレノアがポカンとしていると、奥からやってきたばあやが気づき近寄ってくる。
「こんにちは。今日からお世話になります。これ、お口に合うかどうかわかりませんが」
エレノアが頭を下げて、クッキーの包みを手渡そうとしたが、ばあやが持つには包みが大きすぎると気がつき、奥の机の上におく。
「ご丁寧にありがとうございますじゃ。……じゃが」
クッキーを机の上においたエレノアの背中に、ぴしゃりと杖が打ち付けられた。
「きゃうっ」
ものすごく痛いというほどではなかったが、驚いてエレノアが飛び上がれば、ばあやの叱責が飛んだ。
「背中が曲がっておる! 背筋はもっと伸ばしなされ!」
「は、はい! すみません!」
エレノアがあわててピンと背中を伸ばすと、ばあやが満足そうに頷いた。
「今日からこのばあやがみっちりしごいて差し上げますで、覚悟なさるとよろしい」
「よ、よろしくお願いします」
「まずは、茶の作法からじゃ」
いつの間にか縄でぐるぐる巻きにされて床に転がっていたカモミールの襟をむんずと掴んで、ばあやは「こちらへきなされ」と奥の部屋へと進んでいった。
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