詩人フィルダウシーの偉大なる功績


 十一世紀の詩人であるフィルダウシー。

 日本人の我々にはあまり耳馴染みがないだろうが、ところがどっこい、フィルダウシーの名はイラン国民にとって知らぬ者はいないというほどの知名度を誇っている。

 なぜならフィルダウシーは、イランの国語に関して深く関わっているからである。


 イランの国語は、ペルシャ語。しかし、イラン付近は、基本的にアラビア語に浸食されてしまっていることが多いのである。それなのに、イランのみ、ペルシャ語がちゃんと残っているのである。

 その理由として、フィルダウシーの作った超大叙事詩『王たちの記』の存在があげられるのだ。

『王たちの記』がどれだけ長いかというと、なんと、ホメロスの大叙事詩『イリアッド』の七倍もの長さなのである。


 ペルシャの建国伝説から、七世紀のコスル二世までの王たちの歴史を歌い上げている『王たちの記』は、イラン最大の民族詩であるとともに、文学としても極めて優れているのだ。

 そのため、ペルシャ語がなくなってしまうと、この偉大なる文学と叙事詩が読めないばかりか、ペルシャの建国伝説さえも読めなくなってしまうわけで、それすなわち、イランという国のアイデンティティにも関わってくるのである。

 だからこそ、イランの国語はアラビア語に浸食されることなく、ペルシャ語が残っているのだ。

 国のアイデンティティとして確立した作品を残したフィルダウシーに対して、同じ文筆家として、敬意と尊敬の念に絶えない。

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