シューベルト・憧れの人との邂逅


 歌曲の王という二つ名を持つ、オーストリアの作曲家であるフランツ・シューベルト。

 彼は内気な人で少々あがり症なところがあった。


 そんな彼が最も畏怖し尊敬していた作曲家の一人が、ベートーヴェン。

 ひょんなことから、シューベルトがベートーヴェンの家を訪れる機会がくることになり、感激したシューベルトはベートーヴェンに捧げるために作曲をした。


 そして当日。シューベルトはかなり緊張しながらも、ベートーヴェンに自作の曲を披露してみせた。

 しかし、ここであがり症のシューベルトは、とんでもないことを忘れていた。

 ベートーヴェンは、すでに耳が聞こえなくなってしまっていたのだ。


 シューベルトが曲の披露を終えたところで、ベートーヴェンはシューベルトに称賛の拍手をし、シューベルトに何か書いてもらうために紙とペンを渡そうとした。

 そこで、シューベルトはベートーヴェンが耳が聞こえないことを思い出した。

 シューベルトは一気に顔面蒼白。内気なシューベルトは、そのまま慌てて自宅へと飛んで帰ってしまったのだ。そして、この邂逅を最後に、シューベルトとベートーヴェンが会うことは、二度となかった。

 短気は損気という言葉があるが、内気も損気かもしれない。

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